年の瀬が近づくと、玄関には門松が立ち、台所ではおせちの支度が始まります。
私たちは縁起を担ぐ行事を、ごく当たり前のように毎年くり返してきました。
けれど、ふと立ち止まって考えたことはないでしょうか。
これらは本当に幸運を運んでくれるのだろうか、と。
ある相談者から、まさにその問いをいただいたことがあります。
「お正月の飾りやおせち料理のように、日本には縁起を担ぐものがたくさんあります。ああした節目の行事や物を大切にすると、やはり縁起が良くなり、幸せを運べるのでしょうか」
素直で、そして多くの人が胸の奥に抱いている問いだと思います。
今日はこの問いに、霊的な視点から、けれど正直にお答えしていきます。
縁起物そのものに「直接の幸運効果」はあるのか
はじめに、結論からお伝えします。
縁起物そのものが、それ単体で幸運を運んでくる力は、じつはそれほど大きくありません。
日本には、季節や特定の日にさまざまな品物や食べ物を飾ったり口にしたりする習わしがあります。
お正月の門松、重箱に詰めたおせち料理。
節分には豆をまきます。
もとは関西の風習だった恵方巻も、いまでは全国に根づきました。
沖縄にはムーチーといって、月桃の葉に包んだ餅を食べ、厄除けとする日があります。
では、これらに効き目はあるのか。
正直に申し上げれば、ものによります。
それなりに意味の宿るものもあれば、語呂合わせから生まれた洒落のようなもの、ほとんど効力を感じないものもあるのです。
おせちの黒豆にまめに働けるようにという願いを重ね、昆布を喜ぶに通わせるのも、もとをたどれば人の祈りと遊び心から生まれた工夫でした。
ですから「この飾りさえ置けば運が向く」という期待は、いったん手放してよいと私は思います。
縁起物は、幸せを吐き出す自動販売機ではないからです。
本当に運命を分けているのは「心の向き」です
では、縁起担ぎなど無意味なのでしょうか。
いいえ、まったく違います。
ここに、見落とされがちな霊的な真実があります。
運命をひそかに動かしているのは、飾りそのものではなく、それを大切にする人の心の向きなのです。
たとえば、ここに二人の人がいるとしましょう。
一人は門松を立てながら、去りゆく一年に頭を下げ、新しい年の無事を願います。
もう一人は「そんなものは意味がない」と言い、何も飾らず、何も願わず、ただ日付だけが移ろっていきます。
一年後、この二人の表情は、まるで違うものになっているはずです。
前者は、節目ごとに立ち止まり、感謝し、願いを言葉にする習慣を持っています。
その積み重ねが、日々の小さな変化や恵みに気づく感受性を育てていくのです。
後者はどうでしょう。
行事を切り捨てるたびに、喜びや感謝を見つける機会そのものを手放しています。
心が向かう先を持たなければ、人はどうしても暗い面ばかりを拾い集めてしまうものです。
つまり、縁起物が運を呼ぶのではありません。
縁起物を慈しむ心が、人生の明るい面を見つめる目を育てる。
そして明るい面を見つめる人のもとへ、明るい出来事が引き寄せられていく。
これが、私が長年見つめてきた一つの法則です。
行事は、魂が季節とつながり直す祈りの時間
もう一歩、深いところまでお話しします。
季節の行事には、人の魂を「いま、ここ」へ引き戻す働きがあります。
私たちは放っておくと、過ぎた後悔とまだ来ない不安のあいだを行き来し、目の前の一日を素通りしてしまうものです。
ところが、おせちを少しずつ味わい、豆をまき、月桃の香りに包まれた餅を口にするとき、心はその瞬間にしっかりと根を下ろします。
それは、ささやかでありながら、まぎれもなく本物の祈りの時間です。
手を動かし、香りを感じ、家族の顔を見つめる。
その一つひとつが、慌ただしい日常に潤いという彩りを添えてくれるのです。
私たちはこの世に、ただ楽しむためではなく、学び、味わうために生まれてきました。
この世は、魂が経験を深めるための仮の学び舎なのです。
季節の節目を慈しむ行いは、その学び舎で過ごす日々を、ただの作業から、味わい深い物語へと変えていく力を持っています。
今日からできること
では、明日から何をすればよいのでしょう。
難しい作法を覚える必要はありません。
次にめぐってくる季節の行事を一つ選び、その由来をひとことだけ調べてみてください。
恵方巻なら、なぜその方角を向いて食べるのか。
豆まきなら、いったい何を祓おうとしているのか。
意味を知ったうえで、形だけでなく心を込めて行ってみる。
飾りを置くなら「今年もありがとう」と小さく声に出し、料理を口にするなら「いただきます」をいつもより丁寧に唱えてみる。
たったそれだけのことで、その行事はあなたにとって生きた祈りへと変わります。
くり返します。
縁起物が幸運を運んでくるのではありません。
節目を大切にするあなたの心が、明るい一年をその手に引き寄せていくのです。
今年めぐってくる節目の一つひとつを、どうか丁寧に味わってみてください。
その積み重ねの先に、温かな日々がきっと開けていくはずです。
縁起と心の向きの話は、開運・運気の実践完全ガイドでもくり返し触れています。

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