夜がふけて、部屋に自分ひとりだけがいるとき。電話をかける相手も思い浮かばず、誰かに必要とされている実感も持てないとき。私たちはふいに、世界から切り離されたような心細さを感じます。たしかに人がそばにいるのに、心はどこにもつながっていない。そんな感覚に覚えのある方は、きっと少なくないと思います。これは孤独という迷路の入り口です。一度迷い込むと、出口が見えなくなり、自分は愛から見放されたのだと思い込んでしまいます。
でも、ひとつだけ先にお伝えしておきたいことがあります。愛との繋がりは、本当は絶たれていません。あなたがそれを見失っているだけで、繋がりそのものは今も静かに保たれています。見えなくなることと、無くなることは違うのです。雲に隠れた太陽が消えてしまったわけではないように、あなたを包んでいる愛も、ただ今は見えにくくなっているだけなのです。
孤独は、心を荒れさせる
愛との繋がりを見失った私たちは、不安と恐怖の中に置かれます。そしてその不安は、しばしば心を荒れさせます。理由もなく誰かに苛立ったり、近づいてくる人を遠ざけたり、攻撃的な言葉を口にしてしまったり。あるいは反対に、何もかもがどうでもよくなって、絶望の底に沈み込んでしまう。一見すると正反対の反応に見えますが、根っこは同じです。どちらも、愛から切り離された痛みが形を変えて表に出てきたのだと私は思います。
母親から離された赤ちゃんを思い浮かべてみてください。赤ちゃんは暗闇の中で必死に泣き叫びます。あの声には、自分を生かしてくれる愛の供給源から切り離されることへの、まじりけのない恐怖がこもっています。赤ちゃんにとって、愛から離れることは命に関わることだからです。その恐怖は、子ども心の奥深くに刻み込まれます。そして私たちは大人になってもなお、その記憶を抱えたまま生きています。だから愛から離れることを恐れ、孤独を怖がり、誰かとの繋がりを求め続けるのです。これは弱さではありません。生きてきた証なのです。
愛を思い出すという実践
では、見失った愛と、もう一度繋がるにはどうしたらよいのでしょう。私がお伝えしたいのは、難しい修行でも特別な儀式でもありません。ただ、愛を思い出すことです。
あなたが誰かに深く愛された記憶を、ゆっくりと思い浮かべてみてください。手を握ってもらったぬくもり。名前を呼んでくれた声。何も言わずにそばにいてくれた誰かの気配。愛し合っていた時代、愛とともにあった時。それは今は遠く離れてしまった人かもしれませんし、もうこの世にいない人かもしれません。それでもかまいません。思い出すという行いそのものが、愛との回線をもう一度つなぎ直すからです。
愛は、時間や空間に閉じ込められるものではありません。何年も会っていなくても、たとえ生きる世界が隔てられていても、愛はその境を軽々と超えて、再び繋がりを取り戻します。あなたが心の中で愛を思い出した瞬間、その愛もまた、あなたを思い出しています。繋がりは双方向です。一方通行ではありません。
愛は、あまねく存在している
愛とは、特定の誰かだけが持っている限られた資源ではないのです。それは時間も空間も超えて、この宇宙のすみずみにまで行きわたっているエネルギーです。あなたが孤独だと感じている、まさにその部屋の中にも、愛はちゃんと満ちています。気づかれないまま、あなたを包んでいます。
孤独の迷路から抜け出す鍵は、外に探しに行くことではありません。すでにあるものを思い出すこと。あなたは愛から切り離されたのではなく、ただ少しのあいだ、目を閉じていただけなのです。もう一度、ゆっくり目を開けてみましょう。愛は、ずっとそこにあります。
今日からできること
一つ、愛された記憶をひとつ思い出す。誰かにやさしくされた小さな場面を、寝る前に静かに思い浮かべてみてください。ぬくもりがよみがえってきます。
一つ、孤独を感じたら自分を責めない。不安や苛立ちが出てきても、それは愛を求めている心の声です。「寂しかったんだね」と、自分にやさしく声をかけてあげましょう。
一つ、会えない人に心の中で話しかける。遠く離れた人にも、もういない人にも。言葉は時空を超えて届きます。届いたという感覚を、信じてみてください。
一つ、今この場所に愛が満ちていると想像する。ひとりの部屋でも、あなたは愛に包まれています。深く息を吸いながら、そのことを思い出してみましょう。
一つ、誰かに小さな愛を手渡す。短いメッセージひとつでかまいません。与えた愛は、めぐりめぐってあなた自身の繋がりを取り戻していきます。
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