海神が授けた呪文

2022年11月1日火曜日

言霊


日本神話の中に、海幸山幸の物語があります

兄である海幸彦(火遠命=ほおりのみこと)は海で漁師をし、弟の山幸彦(火遠理命=ほをりのみこと)は山で猟師をしていました

ある時、山幸彦は互いに仕事道具を取り換える話を持ち掛けます

海幸彦はしぶしぶ認め、釣り針を弟の山幸彦に預けます

勢い勇んで釣りに出掛けた山幸彦ですが、一向に魚は釣れません

それどころか、兄の大事な釣り針も、魚に持っていかれてしまいます

海幸彦が道具を戻せと迫るのですが、無くした釣り針を探し出すことが出来ず、代わりに山幸彦は持っていた剣を砕いて、五百個の釣り針を作って返します

それでも海幸彦は認めず、山幸彦はさらに千個の釣り針を作って返すのですが、海幸彦は「もとの釣り針を返せ」と迫るばかりです

山幸彦が悲しんで泣いていると、塩椎神(しおつちのかみ)がやってきてそのわけを聞きます

事情を知った塩椎神は小舟に山幸彦を乗せて、海神であるワタツミの宮殿に送ります

そこには海神の娘の豊玉毘売命がいて、二人は恋するようになり、それを知った海神も、二人の結婚を許します

二人は結婚し、海神の宮殿で三年の月日を暮らすのですが、山幸彦は兄の釣り針の事を思い出しため息をつきます

それを見た豊玉毘売命がわけを聞き、海神が海の中の生き物をみんな集めて、釣り針を探させると、鯛の喉に引っかかっていたのが見つかります

海神は無くしていた釣り針と潮満珠(しおみつたま)潮涸珠(しおふるたま)を山幸彦に差し出してこう言います

「この釣針を兄に返す時、『この針は、おぼ針、すす針、貧針、うる針(憂鬱になる針、心が落ち着かなくなる針、貧しくなる針、愚かになる針)』と言いながら、手を後に回して渡しなさい」

そうすると三年のうちに兄の海幸彦は、貧しくなっていくだろうと伝えます

これは古代の日本にあった呪文だと言えるでしょう

意地悪な兄を没落させるために、海神が山幸彦に授けた呪文です

これにより実際に海幸彦は貧しくなっていきます

呪文以外にも、田んぼを兄と反対に作る事や、もしも兄が攻めてきたら潮満珠(しおみつたま)潮涸珠(しおふるたま)を使って溺れさせなさいと教えます

海神の宮殿というのは、おそらく古代の琉球・奄美を中心とする、海洋国家を意味していたのでしょう

古代の奄美・沖縄が、天皇家の先祖側につき、ともに戦った歴史を物語っているのだと思います

そしてかつての琉球や奄美には、こうした呪文に関する業というのがあったのでしょう

以前にも沖縄で昔からあった呪いについて書いたことがあります


いにしえから霊的な秘術が盛んな地だったのでしょう

それが日本の神話にも反映されて、残されているのだと思われます

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