衆議院議員の定数削減をめぐって、自民党と日本維新の会が新たな削減案を固めたと報じられています。
現状の報道では、小選挙区を二十五議席、比例代表を二十議席削減することで、合計四十五議席を減らし、定数を四百二十人程度にする方向で一致したとされています。
この案に基づき、すでに試算作成にも着手していると言われ、削減対象となる県は二十前後に及ぶ見通しが示されています。
つまり、単なる「一割削減」という大枠を超えて、具体的な数値と地域への影響が現実味を帯びてきた段階だと言えるでしょう。
こうした動きに対し、賛成意見もありますが、反対の声も根強く存在します。
反対側の意見としてよく挙げられるのは、大きく二つあります。
第一に、日本の国会議員数は国際的に見ると決して多いわけではなく、むしろ人口比で見れば少ない方だという指摘です。
人口減少が続くとはいえ、それでも国民一人ひとりの声を政治に反映させるための「窓口」が過度に狭まれば、民主主義そのものの質が損なわれるという懸念があります。
議員数を減らすことは、一見すると合理化やスリム化に見えますが、その裏側で「声の届きづらさ」が進む可能性があるというのが、この意見の本質です。
第二に、議席削減が地方により大きな負担を強いる点です。
地域により人口が少なく、ただでさえ広い範囲を一人の議員がカバーしている地方では、さらに議席が減ることで、住民の声を受け止める政治的な距離が遠のくことになります。
都市部と地方部の格差はただでさえ広がりつつある中で、政治的な代表者が減るとなれば、その不均衡はより深刻化する可能性があるわけです。
この二つの反対意見は、数字以上の意味を含んでいます。
単に「身を切る改革」を掲げて議員数を減らすだけでは済まない問題があるということです。
ここまで踏まえると、私たちはそもそも何を改革すべきなのかという視点に立ち返る必要が出てきます。
議員数を削減すれば確かに見えやすい形で「削った」という結果が出ますが、それが本当に国民の負担軽減や政治の透明性向上につながるかは別問題です。
むしろ、改革すべきは議員数そのものではなく、議員個人や政党に対して認められている支出の部分ではないでしょうか。
政党助成金、議員報酬、公設秘書の人件費、文書通信交通滞在費など、毎年の国費として大きな額が動いている部分が数多く存在します。
これらの経費を、一割でも、いや半分程度でも減らすことができれば、国費の削減としては議員数を減らすより効果的です。
しかも、議員数そのものを減らさないため、反対意見である「民意の反映機会を狭める」という問題も発生しません。
端的にいえば、議員定数の削減ではなく、議員にまつわるコストの削減を進めることで、賛成側が求める“身を切る改革”と、反対側が懸念する“代表性の低下”の両方に配慮する改革が可能となります。
本当に必要なのは、数だけを削ることではなく、政治そのものの透明性と信頼を高める改革です。
議員数を減らしても、支出の仕組みが温存されれば本質は変わりません。
むしろ、議員一人ひとりがどれだけ公的資金を使っているのか、その用途が妥当か、削減できるところはないかを見直すほうが、国民にとって実質的な利益につながります。
そして議員側から見ても、これは“身を切る改革”の精神をより明確に示すことができます。
定数削減よりも実効性のある改革であり、政治全体の信頼を取り戻す大きな一歩にもなるでしょう。
いま求められているのは、単なる見かけの改革ではなく、国民と政治の距離を適切に保ちながら、財政的な負担を確実に減らす方法を選ぶことです。
議員数の削減という分かりやすさに流されるのではなく、何を守り、何を改めるべきか。
その本質を見極める視点が、いまほど必要とされている時代はありません。
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