ホルムズ海峡封鎖で露呈した日本エネルギー外交の急所

2026年3月18日水曜日

政策 政治

ガソリンスタンドの価格表示が、また少し上がっていました。

車のエンジンをかけながら、ふと思うのです。

「この一滴の燃料が、どれほど遠い場所から、どれほど多くの人の手を経て、ここまで届いているのだろう」と。

私たちは日常の中で、エネルギーという「命綱」のことを、ほとんど意識せずに暮らしています。

スイッチを押せば電気がつく。

蛇口をひねれば、お湯が出る。

その「当たり前」の裏側で今、大きな地殻変動が起きています。

日米両政府が、米国産原油を日本で「共同備蓄」することで合意する見通しとなりました。

3月19日のワシントンでの日米首脳会談に合わせた合意で、対米投資5500億ドル(約87兆円)の一環として、アラスカの油田などへの投資が有力視されています。

一見すると、調達先の多角化という合理的な判断に見えます。

しかし私はこのニュースを見た時、以前から警鐘を鳴らしてきたことが早くも現実になり始めていると感じました。

日本は米国から高い原油を買わされる構図に、着実に組み込まれつつあるのです。

中東依存93%──ホルムズ海峡封鎖が突きつけた日本の脆弱さ

日本の原油輸入は、実に93.5%を中東に依存しています。

そして今、米国・イスラエルによるイランへの攻撃を受け、ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となっています。

日本のエネルギーの「生命線」が、他国の紛争によって一瞬で断たれてしまう──この現実は、私たちに何を教えているのでしょうか。

国家においては自国の安全保障を他者に委ね、じっと座っているだけでは、いつか足元をすくわれるのです。

日本は今まさに、その「足元」を見つめ直す時を迎えています。

高市首相は迅速に石油備蓄の放出を決断しました。

民間備蓄15日分に加え、国家備蓄1カ月分、合わせて約8000万バレルという過去最大規模の放出です。

IEA加盟32カ国による4億バレルの協調放出にも先駆けた判断であり、この決断力自体は評価すべきものです。

しかし備蓄の放出とは、貯金を取り崩しているに過ぎません。

本質的な問いは、「これから先、どこから、いくらで、安定して調達し続けるのか」にあります。

米国に原油を「買わされる」構図が始まった

ここで冷静に考えてみましょう。

米国産原油を日本に備蓄するという合意には、たしかに調達先の多角化という側面があります。

ホルムズ海峡を通らないルートが確保できることは、地政学的にも意味があります。

しかし物事には必ず「光」と「影」があります。

影の部分をしっかり見つめなければ、本当の知恵は生まれません。

この合意の本質は、日本が米国の石油産業に巨額の投資を行い、その見返りとして米国産原油を購入するという構図です。

5500億ドルという対米投資の一環に位置づけられている時点で、純粋なエネルギー安全保障の枠を超えた「政治的取引」の色合いが濃いのです。

米国にとっては自国産原油の安定した「お得意様」を確保できるわけで、トランプ政権が掲げる石油増産政策の後押しにもなります。

さらに、日本での備蓄分は販売も可能とされ、アジア諸国への供給拠点としても活用される見通しです。

つまり日本は、エネルギー安全保障を名目として、米国のアジア戦略における原油の「中継基地」となる道を歩み始めているとも読み取れます。

松下幸之助は「依存するな、自立せよ」と繰り返し説きました。

真の安全保障とは、特定の一国に過度に依存することではなく、複数の選択肢を持ち、自らの意志で最善の道を選べる状態のことです。

米国との関係を大切にしながらも、そこに「従属」ではなく「対等な協力」を実現できるかどうか。

それが今、日本外交に問われている最大の課題です。

なぜ日本はロシアを敵に回してはいけないのか

ここで、多くの人が見落としている重要な視点があります。

それはロシアとの関係を通じたエネルギー調達という「北の道」です。

サハリンから日本までの航路はわずか3日程度。

ウラジオストクからなら半日で届きます。

中東からの長い海上輸送に比べ、はるかに近く、コストも安い。

かつて日本は、サハリン1・2プロジェクトを通じて、ロシアから原油やLNGを安定的に調達してきました。

三井物産や三菱商事が参画するサハリン2は、日本のLNG輸入量の約1割を供給する重要なプロジェクトです。

「でも、ロシアは制裁対象ではないか」と思われるかもしれません。

たしかにウクライナ侵攻以降、西側諸国はロシアへの経済制裁を強化しました。

しかし日本のサハリン2関連の取引は、エネルギー安全保障を理由に制裁の例外として認められています。

米財務省も2026年6月まで取引許可を延長しており、実際に2025年には太陽石油が経済産業省の要請を受けてサハリンブレンド原油を購入しています。

つまり、ロシアとのエネルギー協力は、表向きの「制裁」とは別の次元で、すでに実務的に維持されているのです。

ここに、日本外交の「したたかさ」がもっと求められます。

表向きは西側諸国と足並みを揃えながらも、自国のエネルギー安全保障のためにロシアとの実務的なつながりを維持する──これは決して矛盾ではなく、国家として当然の知恵です。

ところが、高市首相はロシアに対して厳しい姿勢を示してきました。

ここに私が最も懸念していることがあります。

それは日本がロシアを過剰に敵対視することで、ロシアと中国をさらに強固に結びつけてしまうという最悪のシナリオです。

歴史の教訓を振り返ってください。

かつてビスマルクは、フランスを孤立させるためにロシアとの友好関係を維持しました。

しかしビスマルク退場後のドイツは、その外交的均衡を失い、やがてフランスとロシアが同盟を結ぶという最悪の事態を招いたのです。

今の東アジアにおいて、日本にとって最大の地政学的課題は中国の膨張です。

その中国に対抗するために最も賢明な戦略は、ロシアとの関係を良好に保ち、中国を牽制する力学を維持することです。

孫子は『兵法』の中で「上兵は謀を伐つ」と説きました。

最上の戦略とは、戦わずして敵の策略を打ち破ることです。

ロシアと中国が手を結べば、日本は東と北の両方から圧力を受けることになります。

これは軍事的にも経済的にも、日本にとって極めて危険な状況です。

だからこそエネルギー問題は単なる経済の話ではなく、日本の存亡に関わる「戦略」の問題なのです。

霊的に見た「自立」の意味──魂の成長と国家の成長

ここで少し視点を高いところに上げてみましょう。

私は霊的な視点から物事を見つめることを大切にしていますが、国家のあり方にも、魂の成長と同じ法則が働いていると感じます。

人間の魂はこの世という「学び舎」で、さまざまな困難を通じて成長します。

その成長の本質は何かと言えば、「依存」から「自立」へ、そして「自立」から「相互尊重」へと進むことです。

アドラー心理学では、人間の幸福は「共同体感覚」──つまり自立した個人が互いを尊重し合う関係の中にあると説きます。

国家もまた同じです。

一国だけで生きていくことはできません。

しかし特定の大国に従属するだけの関係は、魂の成長で言えば「依存」の段階にとどまっているのと同じことです。

私自身、かつて霊的な学びの中で「すべての出会いには意味がある」ということを深く実感した経験があります。

人間関係において、好ましい相手とだけ付き合い、苦手な相手を遠ざけていては、魂は成長できません。

むしろ、緊張関係の中にこそ、もっとも大きな学びが隠されているのです。

国家間の関係もまた然りです。

日本は今、米国との同盟を大切にしながらも、ロシアとも、そして中東諸国とも、それぞれに対等な関係を築く「外交的自立」を果たす時に来ています。

それは八方美人になることではありません。

自国の国益を見据えた上で、どの国とも偏りなく付き合える「精神的な成熟」を持つということです。

中東の平和なくして日本のエネルギーは安定せず、ロシアとの協調なくして北東アジアの安定はありません。

今日からできること──私たちの小さな「自立」が国を変える

では、こうした大きな国家の問題に対して、私たち一人ひとりには何ができるのでしょうか。

まず、エネルギー問題に関心を持ち続けてください。

ガソリン価格の上昇を「仕方ない」と受け流すのではなく、「なぜ上がっているのか」を考えること。

その背景にある国際情勢に目を向けること。

これだけで、あなたの意識は確実に変わります。

次に、省エネを「我慢」ではなく「知恵」として実践してください。

無駄を省くことは、単にお金を節約するためだけではありません。

外国に依存するエネルギーを少しでも減らすことは、日本の自立を一歩進めることでもあるのです。

そして何より、「この国のあり方」について自分なりの考えを持ってください。

選挙で一票を投じる時、候補者がエネルギー政策についてどのようなビジョンを持っているかを確認する。

SNSで流れてくる断片的な情報に振り回されるのではなく、物事の「構造」を見つめる目を養う。

ソクラテスが「無知の知」と呼んだように、自分が知らないことを知ることが、すべての知恵の出発点です。

一人ひとりの意識の変化は、小さな波紋のようなものかもしれません。

しかしその波紋が広がれば、やがてこの国の世論を動かし、政策を変える力になります。

「目覚めた市民」が増えることこそが、日本の本当のエネルギー安全保障なのです。

おわりに──嵐の中にこそ、星は見える

今、日本は大きな嵐の中にいます。

中東情勢の緊迫、エネルギー価格の高騰、そして米国との複雑な関係。

しかし嵐の中にこそ、普段は見えない星が見えることがあります。

この困難は、日本が本当の意味で「自立した国」になるための、大いなる学びの機会なのかもしれません。

私たち一人ひとりの魂が依存から自立へと成長するように、この国もまた、目に見えない大きな力に導かれながら、成長の階段を上っているのだと、私は信じています。

どうか、恐れないでください。

困難の中にこそ、次の時代への扉が隠されています。

そして、その扉を開く鍵は、私たち一人ひとりの「目覚めた意識」の中にあるのです。

あなたの魂は、この時代に生まれてきた意味を、きっと知っています。


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