海に住むタコには、空腹になると自分の足を食べてしまうという話があります。実際にしばらく生け簀の中に入れておくと、自分の足にかじりつく姿が見られるそうです。
ただし、これは空腹が直接の原因ではないとも言われていて、狭い場所に閉じ込められたストレスから起こる行動だという見方もあります。原因はどうあれ、自分で自分の身体を削ってまで何かを満たそうとする姿は、見ていて少し痛々しいものを感じます。
この話を聞いたとき、わたしはふと、利己的に生きている人の姿と重なるものを感じました。一時の満足のために、長い目で見れば自分自身を傷つけている。タコと利己主義者の間には、どこか似た構造が流れているように思えるのです。
奪う生き方は一時的にしか得をしない
利己主義に傾いた人は、何でも自分の利益にしようとして、まわりから奪うことばかりを考えるようになります。お金、時間、評価、好意。気がつけば、人と接するときの基準が「自分にとって得かどうか」だけになっていることもあります。
確かに表面だけを見れば、奪う側は得をしているように映ります。労力をかけずに成果だけ受け取ったり、頭を下げずに望むものを手に入れたり、そうした場面が続くと「うまく立ち回れている」という感覚さえ生まれるかもしれません。
けれども、こうした生き方を長く続けていると、どこかの時点で必ず苦しさが追いついてきます。人が離れていったり、思いがけない場所でつまずいたり、理由のはっきりしない不調が続いたり。タコが満腹のあとで自分の足を失っていることに気づくように、奪う人もまた、いつの間にか自分の何かをすり減らしているのです。
傷ついているのは自分の中の神性
では、奪う生き方によって何が傷ついているのでしょうか。スピリチュアルな視点から言うなら、それは一人ひとりの内側にある神性、あるいは魂の光そのものです。
すべての人は、その内に大きな神性を宿しています。生まれた瞬間からそれは静かに灯っていて、本来は外へ向かって輝き出るはずのものです。ところが利己的な行いを重ねていくと、その光に厚い布をかぶせたり、泥を塗り重ねるような状態になってしまいます。
外から見れば変化が分かりにくいのですが、当人にとっては「自分の中心が鈍くなっていく感覚」として、じわじわと現れてきます。何をしても満たされない、楽しいはずのことが響かない、そんな状態の背景には、内側の光をふさいでしまっている時間の積み重ねがあるのかもしれません。
人は与えることで与えられる
反対に、人に与える方向へ意識を向けていくと、不思議なほど自分の内側が落ち着いていきます。これは精神論というよりも、日々の暮らしの中で多くの方が体験している感覚に近いはずです。
誰かに親切にした帰り道、特別なことをしたわけではないのに気分が軽くなっている。そんな経験は、たいていの人に一度や二度はあるものです。与えることは、相手のためでありながら、同時に自分の内側を整える行為でもあります。
もちろん、自己犠牲とは別物です。自分をすり減らして相手に尽くすことを勧めているわけではありません。自分が苦しくならない範囲で、小さな親切や思いやりを少しずつ循環させていく。その積み重ねが、結果として自分自身を生かしてくれます。
奪った分は必ず形を変えて返ってくる
利己主義者が見落としやすいのは、宇宙には収支を合わせる働きがあるという視点です。奪った分は、必ずどこかで何らかの形になって返ってきます。
それは同じ相手からの直接的な仕返しとは限りません。まったく別の場面で人間関係が崩れたり、健康を損ねたり、思わぬ損失となって現れたり。形は違っても、奪った分量に見合う重さで戻ってくる、というのが大きな仕組みとして働いています。
自分本位なやり方で一時の利益を得たとしても、その後に支払うことになる代償まで含めて考えれば、決して割のいい生き方ではありません。むしろ「楽をしたつもりが、長期で見ると損をしている」ことのほうが多いのです。
今日からできること
1. 今日の自分の行動を振り返り、「奪う側」に回りかけた場面が一つでもなかったか確かめる。
2. 身近な人に、見返りを期待しない小さな親切を一つだけ届けてみる。
3. 「自分が損をしている気がする」と感じたとき、その感覚を一度横に置いて、相手の事情を想像する。
4. 一日の終わりに、自分が誰かから受け取ったものを三つ書き出してみる。
5. 「奪う・与える」のどちらに傾いた一日だったかを、寝る前に静かに振り返る。
利己と利他が幸福をどう左右するかは、幸福完全ガイドの章をのぞくと立体的に見えてきます。
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