非常食の備蓄に不安を感じているあなたへ
ある読者の方から、こんな質問をいただきました。非常用食品はどのくらいの期間分、備蓄したらよいのでしょうか。洪さんは備蓄していますか。天災や貨幣経済の崩壊が急に来るのではと、ときどき不安になります。
この問いの奥には、ただ食料の数量を知りたいという気持ちだけではなく、先の見えない時代を生きる静かな不安があるのだと、私は感じました。今日はその不安にひとつずつ答えていきます。読み終えるころには、何をどれだけ備えればよいのかがはっきりし、そして何より、過剰に怯えなくてよいのだという心の落ち着きを持ち帰っていただけるはずです。
非常食は一週間分が安心の目安
まず実用的な答えからお伝えします。災害への備えとして、非常食は一週間分あると安心できます。目安としては、家族の人数に三食をかけ、それを七日分用意します。たとえば三人家族であれば、三人×三食×七日で、六十三食分の保存食ということになります。
レトルトのご飯、缶詰、乾物、栄養補助食品など、調理に手間のかからないものを中心に組み合わせるとよいでしょう。普段から少し多めに買い置きをして、古いものから食べて補充していく方法をとれば、いざというときに賞味期限が切れていたという失敗も防げます。
そして、食料以上に大切なのが水です。
人が生きていくために、水は一人あたり一日2リットルは必要とされています。三人家族なら、三人×七日×2リットルで、四十二リットルが目安になります。この数字を見て多いと感じる方もいるかもしれません。けれど、飲み水だけでなく、簡単な調理や手を洗うことまで考えると、決して大げさな量ではないのです。ペットボトルの箱を玄関の隅やクローゼットの下段に少しずつ積んでおく。それだけで、心の余白が生まれます。
備えは恐れのためではなく、安心のためにある
ここで、私が一番お伝えしたいことがあります。備蓄というのは、不安に飲み込まれてするものではありません。むしろその逆です。きちんと備えてあるという事実が、日々の心を穏やかにしてくれるのです。
旧約聖書の創世記に、ヨセフという人物の物語があります。彼はエジプトで、これから七年の豊作の後に七年の飢饉が来ると見抜き、豊かな年のうちに穀物を蓄えさせました。やがて飢饉が訪れたとき、その備えが多くの人々の命を救うことになります。この物語が私たちに教えてくれるのは、未来を恐れることと、未来に備えることは、まったく別のものだということです。
恐れている人は、不安をぐるぐると考え続けるだけで動けません。備える人は、できることを淡々と整え、そのあとは安心して今日を生きます。棚に水と食料が並んでいるのを見て、もう大丈夫だと心が落ち着く。その落ち着きこそが、備蓄の本当の目的なのです。
私自身も、家族の人数に見合った食料と水を用意しています。それは未来に怯えているからではなく、整えたうえで穏やかに毎日を過ごすためです。
貨幣経済の崩壊は今すぐ心配しなくてよい
質問の後半にあった、貨幣経済の崩壊についてもお答えします。結論からお伝えすると、貨幣経済が崩壊するようなことは、現時点で起こる可能性はありません。ですから、その心配で夜眠れなくなるようなことはなさらないでください。
ただし、通貨の価値が長い時間をかけて少しずつ下がっていくことは、これから起こりうるかもしれません。これは崩壊ではなく、ゆるやかな変化です。物の値段が時代とともに上がっていくのと同じで、急に世界がひっくり返るような出来事ではないのです。
日本は多くの国債を抱えているため、それを不安に思う方もいます。けれど、円は世界的に安全な資産とみなされています。実際、海外で大きな危機が起きたとき、世界の投資家たちは円を買い求め、円高に動くことが何度もありました。
危機のときにこそ円が選ばれる。それが今の円の立ち位置です。不安というものは、よく知らないからこそ大きく膨らみます。事実を正しく知れば、その多くは適切な大きさに収まっていくものです。
不安と上手につきあう心の持ち方
それでも、ふとした夜に不安が押し寄せてくることは、誰にでもあります。そんなとき思い出していただきたいのは、不安そのものは敵ではないということです。不安は、あなたが大切な家族や暮らしを守りたいと願っている証でもあります。その気持ちを否定するのではなく、できる行動へと変えていけばよいのです。
未来のことを案じて頭の中だけで考え続けると、心は疲れてしまいます。けれど、水を一箱買う、保存食を棚に並べるといった小さな行動を起こすと、不安はすっと軽くなります。手を動かすことには、考えるだけでは得られない安心が宿っているのです。
今日からできること
最後に、今日から始められる具体的な行動をお伝えします。一つ目。家族の人数を数え、人数×三食×七日で必要な食料数を計算し、紙に書き出してみましょう。
二つ目。水を、人数×七日×2リットルで計算します。三人家族なら四十二リットルです。まずは一箱でも買い置きを始めてください。
三つ目。普段食べ慣れた缶詰やレトルトを少し多めに買い、古いものから使って補充する習慣をつけましょう。
四つ目。懐中電灯、電池、簡易トイレ、常備薬など、食料以外の備えも一度見直してみてください。
五つ目。経済のニュースに触れて不安になったら、その出来事の規模を冷静に確かめてみましょう。事実を知ることが、いちばんの安心薬になります。
備えのある暮らしは、心の余裕を生む
備えるという行いは、未来を恐れることではありません。今日を安心して生きるための、やさしい知恵です。棚に並んだ水と食料は、いざというときの命綱であると同時に、毎日の心を支えてくれるお守りのようなものです。準備を整えたら、あとは心配を手放し、目の前の暮らしを大切に味わってください。
あなたが穏やかな心で日々を過ごせること。そして、もし何かが起きても落ち着いて家族を守れる自分でいられること。その両方を、備えという小さな積み重ねが静かに支えてくれます。どうぞ、安心して今日を歩んでいってください。あなたの暮らしに、穏やかな光が満ちていますように。
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