マントラや真言のパワーとは何か
マントラや真言を唱えると、本当に何かが変わるのでしょうか。私はこう感じています。マントラや真言を唱えることは、自分の思いを増幅して発信する装置を手にするようなものだと。
人は何かを思っているとき、その思念をただ頭の中に閉じ込めているわけではありません。
思いはエネルギーとして、たえず外へとにじみ出ています。
そして、発している思念の性質に応じて、同じ質を持った現象や存在が引き寄せられてくる。
これは、私たちが日々経験している小さな法則でもあります。機嫌の悪い日には、なぜか不愉快な出来事が重なる。心が穏やかに満ちている日には、思いがけない親切に出会う。
マントラを唱えるという行為は、この自然ににじみ出ている思念を、意図的に強く配信することにほかなりません。
マントラは思念を増幅する電波塔のようなもの
たとえるなら、自分の胸の中に小さな放送局を建てるようなものです。ふだんの思いは、ささやくような小さな電波です。遠くまでは届きません。
ところがマントラや真言を唱え始めると、その電波塔がぐんと高くなり、出力が一気に増します。
ここで大切な問いが生まれます。あなたはその放送局から、何を流すのでしょうか。
心が澄み、愛や慈悲に満たされているとき、その発信は高次の存在へと通じていきます。
光のような波が、同じ光を持つものと響き合う。マントラはそのための、まことに力強い助けとなります。
逆に、欲やネガティブな思いを胸に抱えたまま唱えると、その強い発信は低次の存在に通じてしまうこともあります。
これは脅しではありません。
装置に善悪はないのです。テレビが流す番組を選ばないように、マントラもまた、唱える人の心という番組をそのまま増幅するだけなのです。
なぜ唱える人の心の状態が問われるのか
ここで、原文でも触れた慎重さについて、もう少し丁寧にお話しします。何らかの現世利益を強く求めて唱えるとき、人の心は知らぬ間に欲の色に染まっています。
お金が欲しい。あの人に振り向いてほしい。霊能や超能力を身につけたい。
そうした願いそのものを、私は責める気持ちはありません。誰の心にも芽生えるものだからです。
ただ、その願いを増幅装置に乗せたとき、何が起こるかは考えておきたいのです。
霊能や超能力を求める思いは、自分を特別な存在に押し上げたいという気持ちと、どこかでつながっています。
その自我の高ぶりに、低次の存在はよく反応します。彼らは人の慢心を喜ぶからです。
仏教には、求めれば求めるほど苦しみが深まるという教えがあります。
仏陀は、渇愛、つまり激しく欲しがる心こそが、人を縛る鎖だと説きました。
利益を狙ってマントラを唱える姿は、ちょうどその渇愛を大きな声で世界に向けて放送しているようなものなのです。
マントラと健やかに向き合うために
では、私たちはマントラや真言を避けるべきなのでしょうか。そうではありません。
整えた心で向き合うなら、マントラはこれ以上ない祈りの道具になります。
道具に罪はない。罪があるとすれば、それを握る手の心のほうである。大切なのは、唱える前に自分の内側を整えるという、ひと手間を惜しまないことです。
十分に整えないまま、効果を期待して安易に唱えること。これに対してだけ、私は慎重であってほしいと願っています。
今日からできること
唱える前に、ひと呼吸おいて自分の動機を見つめてみてください。何かを得るためか、それとも捧げるためか。欲しいものを願うかわりに、感謝の気持ちでマントラを唱えてみる。すでにあるものへ目を向けるのです。
唱える場所と時間を、心が穏やかなときに選ぶ。疲れて荒れた心のままでは、その荒れを増幅してしまいます。
意味のわかる短い祈りの言葉から始め、無理に難しい真言へ進まない。心が言葉と一致していることのほうが大切です。
唱え終えたあと、その響きを誰かの幸せのために手放す。自分のためだけにためこまないことです。
霊能や超能力が欲しいという思いが顔を出したら、それに気づくだけでよい。気づきが、その思いをやわらげてくれます。
結びに
マントラや真言は、あなたの心を世界へ届ける橋です。その橋を渡っていくのは、ほかでもないあなたの思いそのものです。
ですから、唱える技術を磨くよりも先に、唱える心を耕してください。
愛と慈悲で満たされた胸から放たれる響きは、必ず高い場所へと通じていきます。
あなたの祈りが、あなた自身と、あなたが思いを寄せる人たちを、やわらかな光で照らしますように。
その一歩を踏み出そうとしているあなたの魂を、私は心から信じています。
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