親が子供に向けて投げかける言葉は、ときに呪いのように発動してしまうことがあります。何気ないひと言が長く心に残り、それによって苦しんでいる人も少なくありません。今日はそのことを、ひとつの童話を手がかりにしながら見つめてみたいと思います。
カラスに変えられた七人の兄弟
グリム童話に『七羽のからす』という物語があります。ある男には七人の息子がいました。男は娘も欲しいと願っていて、ようやく待望の娘がうまれます。喜んだ男は、息子たちに洗礼用の水を取ってくるように言いつけました。
ところが息子たちは、水くみのバケツを井戸に落としてしまいます。どうしてよいかわからず、途方に暮れている。その様子を、男は子供たちが怠けているのだと思い込み、つい「みんなカラスになればいい」と叫んでしまうのです。すると息子たちは本当にカラスに変身して、空へと飛び立ってしまいました。父親の言葉が呪いとなって、息子たちをカラスに変えてしまったという話です。
不思議なことに、私はこの物語を知る前に『カエルになった少年』という話を自分で書いていました。スピリチュアルスクールで公開しているもので、こちらも父親の言葉でカエルになってしまった少年と、その妹との冒険を描いた物語です。期せずして同じ筋立てになっていたことに、自分でも驚かされました。
これらの物語が示しているのは、親などの言葉によって、子供が自信を失ったり、自分を卑下して劣等感にさいなまれてしまう、いわば呪いのかかった状況に陥るということです。なお『七羽のからす』では、一番下の娘がお兄さんたちを探す旅に出て、ついにカラスに変わった兄たちを見つけ、人間の姿に戻すという結末を迎えます。呪いをかけられても、それを解く道は残されている。物語はそう語りかけてくるようです。
否定の言葉が自分を縛るとき
こうした言葉を投げかけるのは、親だけとはかぎりません。先生など身近な大人から否定的な言葉を受けて、自信を失ってしまうこともあるでしょう。先日「黒柳徹子さんと美輪明宏さんを繋ぐ不思議な縁」という記事を書きました。かわったお子さんだった黒柳さんと美輪さんが、同じ恩師に出会い、その個性を尊重されたことで、自信をもって生きられるようになったという話です。
あの記事を読まれた人の中には、うらやましい、自分にはそんな人はいなかった、と嘆かれた方もいるかもしれません。実際、私自身も振り返ってみると、子供時代にそういう出会いはなかったように思います。普通の子ができることもできず、親からも否定的な言葉を投げかけられ、学校でも先生からいつも叱られていました。じっとしているのが苦手で、物忘ればかりして、勉強もさっぱり。先生からすれば、ずいぶん困った生徒だったのでしょう。
ですから、親や先生をはじめ、大人から投げかけられた言葉によって、自分で自分を縛ってしまう。その苦しさは、私にもよくわかります。けれども、ここからが大切なところです。その縛りは、大人になってから自分で解くことができますし、解いていかなくてはなりません。それは誰のせいでもなく、自分でやり遂げるべきことなのです。
過去の呪縛を自分で解いていく
「親や先生のせいで自分はこうなった」という言葉を、いつまでも口にし続ける。それは結局、自分で自分に呪いをかけ直しているのと変わりません。過去を責める言葉そのものが、新しい縛りになってしまうのです。
否定されることが多ければ、自信を失いもします。けれども、振り返ってみると、それにもよい面があったように思います。私の場合、自分を偉いと思って慢心することが少なく、天狗になって転落するのを防ぐ役には立ちました。ありがたいことに褒めていただくこともありますが、自分では平凡以下の才能だと感じていて、こつこつ積み重ねて、ようやく人並みにできるようになっている。そういう実感があります。うぬぼれてダメになってしまうのを避けるうえで、あの厳しさは役に立っていたのだなと、いまは思えるのです。
もちろん、いつまでも劣等感に苛まれ続けるのもよくありません。今度は自分で、プラスの暗示をかけていくべきでしょう。私たちは偉大な神性・仏性を宿す存在であり、一人ひとりが尊い。自分もまた例外ではなく、魂の奥には偉大なダイヤモンドの原石を抱えています。そう自覚し、心の底に落とし込んでいくことで、過去の呪縛は少しずつほどけていきます。かけられた言葉に支配されるのではなく、自分自身の言葉で、自分を照らし直していきたいものです。
親の言葉が子に残すものについては、家族・親子のカルマ完全ガイドでほかの側面も扱っています。
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