生霊の怖さを伝える、沖縄の古い記録があります。トキの与那城という人物とその妻が、イチジャマ(生霊)を使って人を殺害したとして、取り調べられたという文章です。
トキとは、神事の日取りなどを選ぶ男性で、今でいう占い師のような存在です。このトキを務めていた与那城と妻が、ある女性に対してイチジャマを使ったという訴えが、琉球王府に持ち込まれました。
沖縄に残る「イチジャマ」の記録
イチジャマとは、大和でいう生霊のことです。生霊を使って相手を呪った、というのですね。王府が調べたところ、この夫婦は以前にも別の人物にイチジャマを用い、呪い殺したことがあると白状します。そのため、首里中を引き回しのうえ、成敗されてしまいました。罪は本人だけでなく、夫婦そろって問われたのです。
ビジュル像を煮る、という呪詛
彼らがどのように呪ったのか、はっきりとは分かりません。ただ、ビジュルの像を煮ている姿を目撃した、という証言が残っています。
ビジュルとは、沖縄各地で崇拝される、仏教の十六羅漢のひとり賓頭盧(びんずる)の像のことです。沖縄以外でも、像を撫でることで病気平癒を祈願する信仰があります。本来はありがたい対象です。それを煮るという逆さまの行為によって、相手に呪いをかけていたようなのです。聖なるものを反転させて使う。呪詛とは、こうした歪んだ形を取ることがあります。
呪いを、国が裁いた時代
こうした呪詛で相手を呪い殺した場合、昔の琉球では重い罪に問われ、成敗されました。つまり当時の政府は、霊的な力が実在することを公に認めていたわけです。法の前提に呪いの実在が置かれていた、というのは興味深いことです。
もちろん、こうした裁きは魔女狩りに通じる危うさもあり、現代の感覚では慎重さが必要です。無実の人が呪いの罪を着せられる危険もあるからです。ただこのケースでは、実際に呪詛が行われ、相手が亡くなる事例があったのでしょう。それだけ、人の強い念には現実を動かす力があるということです。古来の人々は、それを肌で知っていたのだと思います。
意図せぬ生霊にも、代償はある
このイチジャマは、意図的に相手を呪う呪詛でした。けれど、本人が意図せず生霊を飛ばしてしまうことも、実はよくあります。嫉妬や恨みといったネガティブな念が強い人は、知らぬうちに相手を呪う生霊を飛ばしているのです。自分では呪っているつもりがなくても、強い負の思いは、それだけで相手に届いてしまいます。
そして呪いは、相手を不幸にするだけでは終わりません。やがて必ず、放った自分に返ってきます。意図的であろうと無意識であろうと、いつかカルマの報いが訪れます。だからこそ、人を呪うことは絶対にしてはいけないのです。
もし誰かを強く恨んでいると気づいたら、その思いをそっと手放していきましょう。相手のためというより、自分を守るためです。深く呼吸し、「もう手放します」と心の中で唱える。恨みを置いていけたとき、あなた自身がいちばん軽くなり、運の流れもまた変わっていきます。
生霊や呪いの代償と、巻き込まれない生き方は生霊・悪霊・憑依から身を守る完全ガイドにまとめています。
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