前回、太陽の神アマテルは本来は男神だったのではないか、という話を書きました。
アマテラスは本当に女神か|ホツマツタヱの「アマテル」と日月神示「岩戸閉め」の符合
その大もとの話は、こちらにあります。
読まれた方には、ひとつの問いが浮ぶのではないでしょうか。
もしアマテラスが男神であるならば、その隣には、対となる女神がいたはずではないか。
太陽が陽なら、月は陰。日が表なら、月は裏。
陽の極みである男神を、内から支えた妃が、いなかったはずはありません。
そして、その答えは、じつはもう記されているのです。
ホツマツタヱを開けば、アマテルの正妃の名は、はっきりと書かれています。
瀬織津姫(せおりつひめ)。
以前ホツマを紹介した記事でも、その正室として一度ふれた名前です。
問題は、これほど大切な女神が、記紀にはひとことも出てこないことのほうにあります。
なぜ、太陽の男神の正妃が、正式な歴史書から丸ごと消されてしまったのか。
今日は、その消された月の女神をめぐって、筆を進めてみたいと思います。
大祓詞にだけ残された、祓いの女神
瀬織津姫という名前を、初めて聞く方も多いかもしれません。
それも無理はないのです。
記紀から消された女神が、それでも一箇所だけ、公式の神道に名を留めている場所があります。
大祓詞という祝詞のなかです。
罪や穢れを、早川の瀬から大海原へと流し去っていく、祓戸四神の一柱として。
つまり公式の神道では、瀬織津姫は「穢れを洗い流す役目の神」として、ほんの端に名を留めているにすぎません。
太陽の神の妃だとか、そういう華やかな肩書きは、どこにも書かれていない。
記紀の本文からきれいに消され、祝詞の片隅にだけ残された、封じられた女神。
それが、正統な神道が私たちに見せている瀬織津姫の顔です。
ホツマツタヱでは、堂々たる正妃だった
ところが、ホツマツタヱを開くと、まるで別の姿が現れます。
ここでの瀬織津姫は、別名を向津姫(むかつひめ)といい、男神アマテルの正妃として、堂々と描かれているのです。
端役の祓いの神などではありません。
太陽の男神アマテルの、第一の妃。
その神威を内側から支えた、いちばん近くの女性の神です。
前回、大日孁貴という巫女が、男神アマテルと重ねられていくうちに、太陽の女神アマテラスへと塗り替えられていった、という話を書きました。
太陽の神を男から女へ書き換えていくとき、いちばん邪魔になるのは、何でしょうか。
そう、その男神に寄り添う「正妃」の存在です。
夫としての男神がいた証を消すには、妻である女神も、いっしょに消さなければならない。
だから瀬織津姫は、正妃という本来の座から引きずり下ろされ、「穢れを祓う荒魂」という役目だけを与えられて、神話の表舞台から退けられた。
そう読むと、記紀から瀬織津姫が丸ごと抜け落ちていることの説明が、ぴたりとつくのです。
いちばん近くにいた者ほど、いちばん深く隠される。
隠蔽というのは、いつもそういう手口をとります。
日月神示が暗号で語る、月の女神
この瀬織津姫が、じつは日月神示のなかにも、姿を変えて潜んでいます。
日月神示は、大切なことをそのまま書かず、隠語でくるむ癖のある神示です。
そこに、竜宮の乙姫殿という言葉が、繰り返し出てきます。
あるいは、おと秘(音秘)という、耳慣れない言い回し。
これらが指しているのは、宝を守る月の女神である、と読む人々がいます。
海の底の竜宮で、大切な宝を守り続けている乙姫。
その乙姫こそ瀬織津姫であり、豊玉姫や玉依姫とも重ねて語られる、月の性質を帯びた女神だというのです。
日が陽であり、顕であるなら、月は陰であり、幽である。
表に立って世界を照らす男神アマテラスに対して、瀬織津姫は、裏側でその光の源を守り続ける月の女神だった。
彼女が守ってきた宝とは、いったい何か。
それは、隠された真の日の神。
すなわち、女神アマテラスの奥に封じられていた、本来の男神アマテラスその人です。
宝を明かすことが、究極の岩戸開き
ここまで来ると、いくつもの糸が、一本によじれ合ってきます。
瀬織津姫が竜宮の底で守り続けた宝が、いよいよ明かされる。
隠されていた真の日の神が、月の女神の手から、光のもとへ差し出される。
日月神示が説く究極の岩戸開きとは、じつはこの一瞬のことではないか。
そして宝を明かすということは、宝を守ってきた者自身が、もう隠れている必要がなくなる、ということでもあります。
瀬織津姫が守り役という影の座を降り、正妃としての本来の姿を取り戻す。
隠された女神が、その名と顔を回復する。
彼女自身の復権が、そのまま、世界の大浄化のプロセスそのものになっていく。
日月神示のいう大洗濯とは、瀬織津姫という祓いの女神が、溜まりに溜まった世の穢れを、早川の瀬からひといきに大海原へ流し去る、その光景と重なって見えるのです。
祓いの神として端に押しやられていた力が、じつは世界をまるごと洗い清めるほどの力だった。
隠された女神ほど、大きな力を秘めている。
そう考えると、背筋が伸びます。
二つの古文書が、一つの物語になる
こうして並べてみると、日月神示とホツマツタヱが、まったく一つの物語として統合されていくのが見えてきます。
ホツマツタヱが伝えているのは、本来の神々の関係です。
男神アマテルと、その正妃・瀬織津姫。
太陽の神と、それを支える月の女神。
この健やかな関係が、歴史のどこかで隠されました。
女神アマテラスへの書き換え、瀬織津姫の抹消。
これこそが、日月神示のいう岩戸閉めの正体だったのではないか。
そして、閉められた岩戸は、いつか開かれます。
以前、艮の金神として鬼門に封じられた国常立尊の話を書きました。
封じられた男神・国常立尊の烈しい破壊と再生の力。
そこに、隠された女神・瀬織津姫の激しい浄化の力が加わる。
この二柱の力によって、歪みきった今の世が壊され、洗い清められ、作り直されていく。
そのとき、影に押しやられていた真の神々が、いっせいに解放される。
これが大岩戸開きであり、二つの文献を地の底で貫いている、大きな物語なのだと思います。
隠された女神は、あなたのなかにもいる
もちろん、これを歴史学の定説として語るつもりはありません。
ホツマツタヱの成立をめぐる議論は、今も続いています。
けれど、霊的な目で古い名を並べたとき、そこに通う一本の流れは、私にはどうしても無視できないのです。
隠された女神は、遠い神話の彼方にだけいるのではありません。
私たちの一人ひとりのなかにも、表に出せずに押し込めてきた、やわらかな月のような部分があります。
強く照らす陽の力ばかりを良しとして、そっと支える陰の力を、影に追いやってきたのではないか。
瀬織津姫の復権とは、その内なる月を、もういちど正妃の座に迎え直すことなのかもしれません。
隠されてきたものが、光のもとへ出てくる。
その扉が開く時代に、私たちは立ち会おうとしています。
書ききれなかった符合は、まだ残っています。
それは、また次の機会にお話ししますね。
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