家が買えない・建てられない・直せない時代へ

2026年4月15日水曜日

経済 時事問題

家が買えない。

建てられない。

買っても、直せない。

そしてやがて——持っている家すら、手放さなければならなくなる人が出てくるかもしれません。

大袈裟に聞こえるでしょうか。

しかしこれは、いま日本の建設現場、不動産市場、そして家計の中で、同時に進行し始めている現実です。

2026年4月、住宅設備大手TOTOがユニットバスの新規受注を全面停止しました。

再開時期は「未定」です。

屋根の防水シート(ルーフィング)は5月から40~50%の値上げが通知され、しかもメーカーの受注停止によって必要量を確保できず、屋根工事そのものに着手できない現場が全国に広がっています。

外壁に欠かせない透湿防水シートも供給制限に入りました。

塗料に不可欠なシンナーは大手通販サイトで在庫切れとなり、次回出荷予定は6月下旬。

ホームセンターの棚には「一人1缶まで」「入荷時期未定」の貼り紙が並んでいます。

同時に、住宅ローンの変動金利はついに1%の大台に乗り、食料品は4月だけで約2,800品目が値上げされ、電気・ガスの政府補助金は3月で打ち切られました。

あらゆる方向から、私たちの「住まい」と「暮らし」が圧迫されています。

私はかねてよりホルムズ海峡の危機が日本の生活基盤を根底から揺るがす日が来ると書いてきました。

残念ながら、その警告が現実の形をとり始めています。

しかし、怖れるためにこの記事を書いているのではありません。

「知ること」は力です。

そして知った上でどう生きるかを選ぶことこそが、私たち一人ひとりの魂に与えられた自由なのです。

新築が建てられない——資材が「届かない」現実

「家を建てる」という行為が、これほど多くの石油化学製品に支えられていたことを、多くの方は知らなかったのではないでしょうか。

断熱材、防水シート、塩ビ配管、接着剤、シーリング材、塗料、そしてそれらを溶かし伸ばすためのシンナー——住宅を構成する部材の多くが、ナフサという石油由来の原料から作られています。

日本はこのナフサの約74%を中東からの輸入に頼ってきました。

しかもナフサには原油のような国家備蓄制度がなく、民間在庫はわずか約20日分しかありません。

ホルムズ海峡が事実上の封鎖状態となった今、この細い命綱は限界に達しつつあります。

現場で何が起きているかを整理しましょう。

TOTOのユニットバス受注停止に続き、LIXILも供給条件の調整を示唆しています。

積水化学は建材製品を30%値上げ。

断熱材は約40%の値上げ。

屋根材「リッジウェイ」は約30%の値上げ。

塗料最大手エスケー化研も価格改定を発表し、溶剤系塗料は入手が極めて困難になっています。

さらに深刻なのが、シーリング材メーカー・コニシとサンライズも出荷制限が入っています。

シーリング材は外壁の目地を埋める、いわば家の「防水の要」です。

これがなければ、新築はおろか既存住宅の補修さえできません。

ある工務店はこう語っています——特定の部材が一つでも届かなければ、工事全体が止まってしまうのだと。

これは単なる「値上がり」ではありません。

お金を出しても買えない、注文しても届かない、届かないから工事が進まない——そういう次元の問題が、いま日本中の建設現場で起きているのです。

中古住宅も逃げ場にならない

「新築が無理なら中古を買えばいい」——そう考える方もいらっしゃるでしょう。

実際、かつてのウッドショックの際にも、新築の高騰を受けて中古戸建てへの需要が急増し、首都圏の中古住宅価格が上昇しました。

今回も同じ流れが起きる可能性は高いと思います。

しかし、ここに多くの方が見落としている重大な落とし穴があります。

中古住宅は「買った後に修繕できるかどうか」が命です。

屋根の塗り替え、外壁の補修、配管の交換、防水処理のやり直し——これらの定期的なメンテナンスができなければ、中古住宅はただの「朽ちていくのを待つ箱」になってしまいます。

そして今、まさにその修繕に必要な資材が手に入らなくなりつつあるのです。

外壁塗装に不可欠なシンナーは全国の塗装現場で入手困難になり、屋根修繕用のルーフィングは受注停止で確保できず、工事に着手できないお客様が続出しています。

見積書の有効期限を1か月から10日間に短縮した業者もあります。

それほど価格変動が激しく、先の見通しが立たないのです。

つまり——新築は建てられない。

中古は買っても直せない。

「家を手に入れる」という選択肢そのものが、どちらに向かっても塞がりつつあります。

これは戦後の日本が経験したことのない、まったく新しい種類の住宅危機です。

迫りくる「もう一つの危機」——金利上昇と生活費の同時高騰

しかし、住宅の問題はこれだけではありません。

むしろ、これからお話しすることのほうが、より多くの方の暮らしに直接響いてくるかもしれません。

それは、住宅ローン金利の上昇と、あらゆる生活費の同時高騰です。

日本銀行は2025年12月、政策金利を0.75%に引き上げました。

これは1995年9月以来、実に30年ぶりの水準です。

この影響を受けて、2026年4月の住宅ローン変動金利は、ついに適用1%の大台に乗りました。

すでに変動金利で住宅ローンを組んでいる方は、2026年7月返済分から適用金利が引き上げられる見込みです。

「月々の返済額が数千円増える程度では?」と思われるかもしれません。

しかし、これは金利上昇の「始まり」に過ぎません。

今後さらに利上げが続けば、35年ローンを組んでいる方の総返済額は数百万円単位で膨らんでいく可能性があります。

そしてこの金利上昇は、孤立した現象ではありません。

同時に、あらゆる生活コストが上がり続けています。

2026年4月だけで、食品は約2,800品目が値上げされました。

平均値上げ率は14%。

調味料、乳製品、菓子類、即席麺——日々の食卓に並ぶものが軒並み高くなっています。

しかもこれらはまだホルムズ海峡封鎖の影響を受ける前の値上がりであり、物価高騰はこれから本格的になっていくでしょう。

電気・ガスの政府補助金は3月使用分で終了し、4月以降の請求から家計負担が跳ね上がります。

第一生命経済研究所の試算では、4人家族で年間約8.9万円、月額にして約7,400円の負担増とされています。

ガソリン価格もホルムズ海峡の封鎖で高止まりし、通勤や物流のコストが全体に波及しています。

想像してみてください。

食費が上がる。

電気代が上がる。

ガソリン代が上がる。

そしてその上に、住宅ローンの返済額まで上がる。

一つ一つは「耐えられる」範囲かもしれません。

しかし、それらが同時に、しかも継続的に家計を圧迫し続けたとき——やがて限界を迎える家庭が出てくることは、残念ながら避けられないでしょう。

「家を手放す」時代が来るかもしれない

ここで、私が最も懸念していることを率直にお伝えします。

これまでの日本では「家は一生の買い物」と言われてきました。

ローンを組んで、コツコツ返済して、老後は自分の家で安心して暮らす——それが多くの方の人生設計でした。

しかし今、その前提が根底から揺らぎつつあります。

ローン金利が上昇し、返済額が増える。

食費・光熱費・燃料費が上がり、手元に残るお金が減る。

家を維持するための修繕費は高騰し、そもそも修繕に必要な資材が手に入らない。

修繕できない家は劣化が進み、資産価値は下がっていく。

この四重苦の中で、「もう維持できない」と家を手放さざるを得ない方が出てくる恐れがあります。

1973年の第一次オイルショック、1979年の第二次オイルショック——日本はかつて二度、石油危機を経験しました。

しかし当時と今とでは、状況が根本的に異なります。

当時の日本は高度経済成長の余力があり、人口も増え、賃金も上がっていました。

今の日本は、少子高齢化の中で実質賃金が伸び悩み、社会保障費の負担は増え続けています。

そこに、エネルギー危機と金利上昇と物価高騰が同時に押し寄せている。

この「複合的な圧力」こそが、今回の危機の本質です。

古代ローマの哲学者セネカは、こう述べています。

「運命が準備してくれるのを待つのではなく、自ら備える者だけが、嵐を乗り越えられる」

怖れを煽りたいのではありません。

しかし、「きっと大丈夫だろう」という楽観だけで乗り越えられる状況ではなくなりつつあることを、正直にお伝えしなければならないと感じています。

霊的な視点——なぜ「住まい」が揺らぐのか

ここで少し、目に見えない次元からこの問題を見つめてみたいと思います。

仏教には「依正不二(えしょうふに)」という教えがあります。

「依報」とは私たちを取り巻く環境——住まい、自然、社会。

「正報」とは私たち自身の心と魂。

この二つは、本来切り離すことのできない一体のものだという教えです。

つまり、住まいという「環境」が揺らいでいるとき、それは私たち自身の「内なる土台」が問い直されているということでもあるのです。

戦後80年間、私たちは石油化学文明の上にすべてを築いてきました。

プラスチックなしには成り立たない住宅。

合成素材に依存した建設。

石油由来の断熱材と防水材。

便利で快適な暮らし。

しかし同時に、その基盤がいかに脆く、いかに遠い地域の資源に依存していたかを、私たちは忘れてしまっていました。

そしてもう一つ——「家を持つことが人生の成功である」という価値観そのものも、今問われているように感じます。

ローンという名の借金を35年間背負い、そのために自分の時間と健康を犠牲にして働き続ける。

それは本当に「豊かさ」だったのでしょうか。

かつて日本の家は、木と土と紙と石でできていました。

地域の山から切り出した木材で柱を立て、土壁で囲い、茅や瓦で屋根を葺きました。

すべてが地域の自然から生まれ、やがて自然に還る循環の中にありました。

そして何より、家は「所有するもの」である以上に、家族が寄り添い、笑い合い、疲れた心を癒す「魂のゆりかご」でした。

今回の危機は、私たちに問いかけています。

あなたにとって「住まい」とは何ですか——と。

石油に頼らない木や土やバイオ素材の家づくり。

所有ではなく分かち合いの住まい方。

大地に根ざした、もっと素朴で、もっと確かな暮らし。

危機は常に、古い時代の扉を閉じ、新しい時代の扉を開く転換点でもあります。

パスカルは『パンセ』の中でこう記しています。

「人間は自然のうちで最も弱い一本の葦にすぎない。しかし、それは考える葦である」

嵐に折れそうな葦であっても、考え、選び、行動することができる。

それが人間に与えられた、何ものにも代えがたい力です。

今、私たちにできること

では、この複合的な危機の中で、具体的に何ができるのでしょうか。

一、住宅の新築・リフォームを検討中の方は、ハウスメーカーや工務店に今すぐ連絡を取り、資材の確保状況と工期の見通しを確認してください。

見積書の有効期限が10日間にまで短縮されている業者もあります。

「待てば安くなる」という常識は、もう通用しません。

二、中古住宅の購入を検討している方は、「修繕可能性」を最優先の判断基準にしてください。

屋根・外壁・配管の状態を専門家に診てもらい、今後数年以内に大規模修繕が必要な物件は慎重に見極める必要があります。

三、すでに持ち家のある方は、今のうちにできる修繕を早めに検討してください。

特に屋根と外壁の防水処理は、資材がまだ流通している今が当面の最後のチャンスになるかもしれません。

四、住宅ローンを変動金利で組んでいる方は、今後の返済額の増加を試算し、家計の余力を確認してください。

食費・光熱費・燃料費の上昇分も含めて、月々のキャッシュフローを見直すことが大切です。

場合によっては、固定金利への借り換えや、繰り上げ返済の検討も視野に入れてください。

五、ナフサに依存しない代替素材にも目を向けましょう。

タカラスタンダードのホーロー壁パネルのように、今回の供給危機の影響を受けにくい製品もあります。

塗料についても、シンナーを使わない水性塗料への切り替えが現場では一つの選択肢として広がりつつあります。

六、そして最も大切なこと——パニックにならないでください。

建設現場では断熱材の盗難事件や資材の買い占めがすでに報告されています。

不安に駆られて奪い合えば、社会全体の傷はさらに深くなります。

私たちの本質は、奪い合う存在ではありません。

分かち合い、支え合う存在です。

おわりに——嵐の中でも、魂の灯は消えない

今起きていることは、確かに深刻です。

家は建てられなくなりつつあり、買えなくなりつつあり、中古さえも修繕の道が狭まっている。

その上に金利は上がり、生活費は増え、持っている家すら維持できなくなる方が出てくるかもしれない。

住まいという、人間にとって最も根源的な安心の場所が揺らいでいます。

しかし私は、この困難の中にこそ大切な気づきが隠されていると信じています。

石油化学文明への過度な依存から目を覚ますこと。

「所有」にしがみつくのではなく、「分かち合い」の中に安心を見出すこと。

そして何より、家という「箱」ではなく、家族の絆や地域のつながりという「目に見えない住まい」こそが、私たちの本当の安心の土台だと思い出すこと。

それは後退ではありません。

螺旋状に上昇していく、魂の進化の一歩です。

嵐は必ず過ぎ去ります。

しかし、嵐の中で灯した灯りは、嵐が去った後もあなたの道を照らし続けます。

どうか今日という日を、恐れではなく、智慧と愛をもって生きてください。

あなたの魂の中には、どんな嵐にも消えることのない灯りがすでに宿っています。

その灯りを信じて、一歩ずつ、ともに前に進んでまいりましょう。

より深い視点から、この時代の変容の意味を知りたい方は、拙著『ソフィアの森で見つけた幸せの鍵』をお手に取っていただければ幸いです。

目に見える世界が揺れるとき、目に見えない世界の中にこそ、揺るがぬ答えがあります。



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