学校中で一番評判の悪い悪たれトミーと呼ばれた生徒がいました。授業中に騒ぐ、友達に手を出す、宿題はやってこない。先生方は彼の問題行動に頭を痛め、新学期にどのクラスへ振り分けるかで毎年もめていたといいます。
そんなトミーの担任になることが決まったのが、ホプキンス先生でした。初日、教壇に立った先生は一人ひとり生徒の名前を読み上げ、短い言葉をかけていきます。やがてトミーの番が来た時、先生は彼の目をまっすぐ見据えて、こう言いました。
「君は生まれながらのリーダーなんだってね」
「トミー、先生は聞いているわよ。君は生まれながらのリーダーなんだってね」
今まで先生から褒められたことのない、怒られてばかりだったトミーは驚いて言葉を失いました。ホプキンス先生はさらに続けます。「先生はこのクラスを今年の四年生で一番いいクラスにしようと思っているの。それには、君が一番の頼りよ。たのむわね」
悪たれと呼ばれてきた少年に、先生は予想もしなかった期待をかけたのです。その日からトミーは少しずつ変わっていきました。授業に集中するようになり、騒ぐ生徒をたしなめる側に回り、やがてクラスのまとめ役になっていったといいます。
この話は、D・カーネギーの名著『人を動かす』に紹介されている実話をもとにしています。たった一言の言葉が、悪童をリーダーへと一瞬で変えてしまった。これは作り話ではなく、人間の心に普遍的に働く霊的な法則を物語っています。
人は言葉の暗示通りに変わる
人間というものは、自分にかけられた言葉の通りに姿を変えていく性質を持っています。心理学ではピグマリオン効果と呼ばれ、教師が「この子は伸びる」と信じて接した生徒の成績が、実際に向上していくことが知られています。
幼い頃から「お前は悪い子だ」「どうせ何をやってもダメだ」と言い聞かされて育った子は、その言葉どおりの自分になっていきます。逆に「お前には才能がある」「お母さんは信じているよ」と認められて育った子は、期待に応えるように成長していくのです。
言葉は単なる音ではありません。発した側の思いと、受けた側の潜在意識に深く染み込み、現実を形づくる種になります。霊的にいえば、言葉は波動を持ち、その波動と同じ周波数の出来事を引き寄せる磁石のような働きをしています。
家庭や職場で交わされる言葉が現実を作る
これは子供と先生の関係だけではありません。親が子供にかける言葉、夫婦のあいだで交わされる言葉、職場で上司が部下に投げかける言葉、そのすべてが目に見えない種となって相手の心に蒔かれていきます。
「あなたはいつも気が利かない」と言われ続けた人は、本当に気が利かない人になっていきます。「あなたはやさしいね」と言われて育った人は、やさしさを発揮する機会を自然と引き寄せていきます。家庭で飛び交う言葉が荒ければ、その家庭には荒い出来事が起こりやすくなり、感謝の言葉が多い家庭には穏やかな現実が積み上がっていきます。
毎日交わされる言葉は小さな雫のようですが、長い年月をかけて岩をも穿つ力を持っています。何気なく口にした一言が、相手の人生を曲げてしまうこともあれば、救うこともあるのです。
自分にかける言葉と霊的な引き寄せ
子供のうちは周囲の言葉に大きく左右されますが、大人になればもうひとつ別の仕事が増えてきます。自分で自分にかける言葉、つまり自己暗示の責任です。
「自分はどうせダメだ」「自分には何の取り柄もない」と心の中でつぶやき続けると、その波動が現実に呼応する出来事を引き寄せていきます。霊的にいえば、自己卑下の言葉は守護霊や指導霊の応援を遮断してしまう壁になります。せっかく天が用意してくれている支援も、本人が「自分には届かない」と思い込んでいれば素通りしていくのです。
逆に「自分には素晴らしい力が眠っている」「必ず良い方向へ進んでいける」と静かに念じていると、潜在意識の奥に光の種が植えられ、目には見えない次元から助けが集まってきます。
自己暗示を実践する具体的な方法
では、どのように自己暗示をかけていけば良いのでしょうか。難しい修行は要りません。日常生活のなかでできる方法を紹介します。
朝起きてすぐと、夜眠りに就く直前は、潜在意識の扉が開きやすい時間帯です。この二つの時間に、肯定的な短い言葉を心の中で三回ずつ繰り返してみてください。「私は日々良くなっている」「私は守られている」「私には乗り越える力がある」、こうしたシンプルな言葉で十分です。
もうひとつおすすめなのが、紙に書いて目につく場所に貼る方法です。手帳の表紙、トイレの壁、洗面所の鏡の横。文字にして毎日視界に入れることで、繰り返し潜在意識へ届けることができます。手書きの方が念が乗りやすいので、できれば自分のペンで書いてください。
今日からできること
一つ、自分や家族にかけている口癖を点検する。一日のあいだに「疲れた」「ダメだ」「面倒くさい」を何回つぶやいているか数えてみると、自分が日常的に蒔いている種が見えてきます。
二つ、否定的な言葉を肯定的な言い換えに変えていく。「疲れた」を「よくがんばった」に、「ダメだ」を「次はこうしてみよう」に。同じ場面でも、選ぶ言葉ひとつで波動が変わります。
三つ、朝晩に短い自己肯定の言葉を三回唱える。「私は守られている」「私は良い方向へ進んでいる」など、自分にしっくりくる言葉を見つけて、寝起きと寝る前に心の中で繰り返してください。
四つ、肯定の言葉を紙に書いて貼る。手書きで短く書き、毎日視界に入る場所に貼る。鏡の横、手帳、スマホの待ち受けでも構いません。視覚から潜在意識に染み込ませていきます。
五つ、身近な人へ良い言葉を一日一回かける。家族や同僚に「ありがとう」「助かったよ」「あなたがいてくれて良かった」と伝える。相手に贈った言葉は巡り巡って自分の現実にも返ってきます。
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