弘法大師空海の真実、入定伝説は今も生きているのか

2017年5月8日月曜日

人物 仏教

真言密教を開いた弘法大師空海について、読者の方からこんな質問をいただきました。

空海は高野山で入定して、千二百年たった今も肉体のまま生き続けていると聞きました、これは本当ですかという内容です。

古くから語り継がれてきた、とても有名な伝説です。

信仰の世界で大切にされてきた話ですから、頭ごなしに否定したいわけではありません。

けれども霊的な視点から見たとき、この伝説をどう受けとめればよいのか、私の考えをお話ししたいと思います。

入定とは何か、高野山と空海のこと

はじめに、入定という言葉に馴染みのない方のために、やさしく説明させてください。

空海は平安時代に活躍した僧侶で、唐に渡って密教を学び、日本に真言密教を伝えました。

その修行の地として開いたのが、和歌山の山深くにある高野山です。

入定とは、深い瞑想の境地に入ったまま生命の活動を終えることを指します。

空海は六十二歳のとき、高野山の奥の院で入定したと伝えられています。

そしてその入定は死ではなく、永遠の瞑想に入った状態であり、空海は今も肉体を保ったまま、衆生を救うために生き続けているのだと信じられてきました。

高野山では今も一日に二度、奥の院の空海のもとへ食事が運ばれています。

千二百年もの間、欠かさず続けられてきたこの営みには、空海を慕う人々の深い祈りがこもっています。

こうした信仰の姿そのものは、とても尊いものだと私は感じます。

当時の肉体は生き続けてはいない

では、空海は本当に肉体のまま生きているのでしょうか。

結論からお伝えすると、入定された当時の肉体が、今もそのまま生き続けているということはないでしょう。

肉体には寿命があります。

これはどんなに徳の高い方であっても、変わることのない自然の道理です。

空海ほどの方が、肉体だけを千二百年も山の中にとどめ、瞑想の姿勢のまま動かずにいる、そんな姿を想像してみてください。

もしそれが事実なら、空海は何の仕事もできず、ただ苦痛のなかに縛られ続けることになってしまいます。

それは、衆生を救おうとした空海の願いとは、まるで反対の状態です。

肉体に縛りつけられて動けないことは、自由でも救いでもありません。

ですから私は、空海が肉体のまま入定し続けているという見方を、そのまま事実として受けとる必要はないと考えています。

魂は永遠の生命の世界で生き続けている

けれども、ここで話が終わるわけではありません。

むしろここからが、この伝説のいちばん大切なところだと私は思っています。

肉体は終えても、魂は決して消えません。

私たちはみな、肉体を脱いだあと、魂としてあの世へ帰っていきます。

そこは永遠の生命の世界であり、空海もまた、その世界へ帰り、今も確かに生き続けているのです。

肉体を脱ぎ捨てたからこそ、空海は自由自在に活動できるようになりました。

肉体という器は、この世で働くためにはなくてはならないものですが、同時に大きな制約でもあります。

場所に縛られ、時間に縛られ、衰えと痛みをともないます。

その器を脱いだ空海は、いまや一つの場所にとどまる必要がありません。

あの世で多くの魂を導きながら、同時にこの世にも目を注ぎ、人々に指導を与えているのです。

そう考えると、入定の伝説は決して間違いではなかったとわかります。

空海は今も生きている、この言い伝えは霊的にはまったくそのとおりなのです。

ただ生きている場所が、高野山の岩窟の中ではなく、永遠の生命の世界であった、というだけのことです。

今日からできること

空海の真実から、私たちが日々の暮らしに生かせることをお伝えします。

一つ、肉体がすべてではないと思い出す。体の衰えや痛みに心が沈むとき、自分の本体は魂であることを思い起こしてみてください。

二つ、亡くなった大切な人を身近に感じる。魂が生き続けているなら、先に旅立った方も、今もあなたを見守っています。

三つ、高野山や空海ゆかりの地を心静かに訪ねる。祈りの積み重なった場所には、人の想いの温かさが宿っています。

四つ、空海の言葉や生き方に少し触れてみる。今も導きを与えている方の歩みは、生きるうえでの大きな励みになります。

五つ、目に見えない助けに感謝する。うまく事が運んだとき、見えない世界からの後押しがあったかもしれないと思ってみてください。

結びに

弘法大師空海は、肉体としては千二百年前にこの世での役目を終えました。

けれども魂としては、永遠の生命の世界で今も生き生きと活動を続けています。

入定の伝説は、その霊的な真実を、人々が信仰の言葉で大切に語り継いできたものだと私は受けとめています。

空海は死んだのではなく、より自由な姿になって、あの世とこの世の両方で働き続けているのです。

その温かいまなざしは、今を生きる私たちにも、変わらず注がれています。

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