神との対話を霊的に識別する読み方

2015年12月23日水曜日

スピリチュアル 人物

読者の方からのアンケートで、ニール・ドナルド・ウォルシュさんの『神との対話』について書いてほしいという声をいただきました。

日本でもベストセラーになった本ですから、手に取ったことのある方は多いと思います。良い言葉がたくさん詰まっている一方で、読みながら少し立ち止まってしまう箇所もある。今日は、その本を頭ごなしに肯定も否定もせず、霊的に識別するという読み方をご一緒に考えてみたいのです。

霊的な本との付き合い方を知っておくと、これから先どんな情報に出会っても、自分の足で立っていられます。受け取るものと、保留するものを、自分で選び分けられるようになる。それが今日お伝えしたいことの中心です。

『神との対話』を読んで私が感じたこと

私自身も以前にこの本を読みました。

語っている意識体は理性的で、筋道を立てて話すタイプだと感じました。感情に訴えるよりも、論理で読者を納得させていく。会話の内容は、基本的には良いことが多く語られているように思います。愛について、ゆるしについて、おそれを手放すことについて。心が軽くなる読者がいるのは当然だと思いますし、それを否定する気持ちは私にはありません。

だからこそ、です。

良い内容が大半を占める本だからこそ、その中にまぎれた一つの考え方が、するりと読者の心に入り込んでしまう。おいしい料理の中に、ほんの少しだけ違和感のある味が混ざっているようなもの。全体がおいしいぶん、その一口を疑わずに飲み込んでしまいやすいのです。

ヒトラーをめぐる一節に私が感じる問題

私が気になったのは、ヒトラーについて述べた一節でした。

そこにはおおよそ、ヒトラーは誰も傷つけてはおらず、殺した者たちをただ人生の苦しみから解放してやったのだ、という趣旨の考え方が示されています。魂は死なないのだから、肉体を奪うことは究極の害ではない。そういう論理です。

魂が永遠であるという一点だけを取り出せば、それ自体は霊的真実に近いことかもしれません。

けれども、その真実を「だから殺害は解放になる」という結論に接続したとき、私はそこに重大なあやまりがあると考えます。

この考え方を一歩進めてみてください。

もし加害が魂の解放にあたるのなら、世界中のどんな殺人も「被害者を人生の苦しみから救ってやった行為」だと言い張れることになります。加害者が被害者の意思を一方的に踏みつけたという事実が、きれいに消えてしまう。残された遺族の悲しみも、行き場をなくします。そんな理屈が広まれば、暴力をふるった側が、自分の罪を霊的な言葉で塗り替えてしまえる。悪を悪と呼べなくなることこそ、私が最もおそれることです。

ドイツの哲学者カントは、人間を決して手段としてのみ扱ってはならず、つねに目的として扱えと説きました。

一人ひとりの命と意思は、誰かの理屈に都合よく利用されてよいものではない。たとえ「魂のためだ」という美しい言葉で包まれていても、当人の同意なく命を奪うことは、その人を手段におとしめる行為です。霊的な真理は、人を救うために使われるべきもので、加害を正当化するために使われてはなりません。

地球は善悪を学ぶ場所だからこそ識別がいる

地球には、調和した霊の世界もあれば、不調和な霊の世界も実際に存在します。

そして私たちは今、悪を離れ、善を選んでいくという長い学びのただ中にいます。善と悪の区別があいまいになる思想は、その学びを内側からゆるめてしまう。だから私は、この一節を見過ごせなかったのです。

誤解のないように繰り返します。

私は著者であるウォルシュさんを責めているのではありません。霊的な情報を受け取って言葉にする作業には、書き手の理解や時代の限界が、どうしてもにじみます。完璧に純粋な伝達というものは、この地上にはなかなか存在しません。問われているのは著者の人格ではなく、本に書かれた思想そのものへの賛否です。良いところは良いと認め、引っかかるところは引っかかると言う。それが本に対する誠実な向き合い方だと私は思います。

すべてを疑う必要はない。ただ、すべてをそのまま信じる必要もない。受け取ったものを、自分の良心という秤にかけてみること。

霊的な本を識別しながら読むために

では、霊的な本に出会ったとき、私たちは何をすればよいのでしょう。

今日からできることを、いくつか挙げてみます。

一つ、その教えを実生活にあてはめてみる。もし「この理屈が世界中に広まったら何が起きるか」と想像してみて、誰かの痛みが軽んじられる結論になるなら、その教えはどこかで道を外れています。

二つ、心が温かくなるか、それとも冷たくなるかを観察する。愛から出た言葉は、読んだあとに人をやさしくします。逆に、誰かを切り捨ててよい気分にさせる言葉には、用心してください。

三つ、本全体を一括で受け入れたり捨てたりしない。良い章は栄養として取り入れ、引っかかる章は「保留」の箱に入れておく。本は丸ごと飲み込むものではなく、選びながら味わうものです。

四つ、複数の本や教えと照らし合わせる。一冊だけを唯一の正解にしないこと。古今の聖典や良書が共通して語っていることは、信頼に足る土台になります。

五つ、最後は自分の良心に問う。どんなに権威のある意識体が語った言葉でも、最終的に判断するのはあなた自身です。良心は、誰の中にもある内なる導き手です。

霊的な情報があふれる時代に、いちばん大切なのは、すべてを信じることでも、すべてを疑うことでもありません。

受け取ったものを自分の心で吟味し、善いものを選び取る力です。その力は、識別を重ねるたびに少しずつ育っていきます。今日あなたが一冊の本の前で立ち止まり、考えたこと。それ自体が、あなたの魂がきちんと成長している証拠です。迷いながら見分けようとするその歩みを、私は心から信じています。

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