2026年7月17日、改正皇室典範が参議院本会議で可決され、成立しました。
皇族の数が減り続け、宮様方の御公務をどう支えていくのか。長く先送りにされてきた問いに、国会がようやく一つの答えを出した形です。
ただ、この改正で決まったのは大きく二つ。婚姻後も女性皇族が皇室にとどまれるようにする仕組みと、旧宮家の男系男子を養子として迎えられるようにする仕組みです。
どちらも「皇族の数を確保する」ための策であって、誰が天皇の位を継ぐのかを定めた第一条には手をつけていません。悠仁さまへと続く継承順位は、これまで通りです。
将来にわたって皇位を安定して継いでいけるのか。女性天皇や女系天皇を認めるのか、認めないのか。
ここが今回の改正で結論が出なかったからこそ、世論はいまも真っ二つに割れています。
数だけ確保しても跡継ぎの問題は残るという声もあれば、伝統に沿って男系を守れた点を評価する声もある。
陛下が口にされた「国民の理解」
そんななか、天皇陛下ご自身の言葉が注目を集めました。2026年6月11日、外国御訪問を前にした記者会見で、陛下は皇族数確保のあり方をめぐる議論について「国民の皆さんの理解が得られるものとなることを望んでおります」と述べられています。
政治について陛下が、進行中の制度論についてお気持ちをにじませる。これは異例のことでした。ではその「理解」とは何を指すのか。
多くの国民が愛子さまの即位を望んでいる、その声を受け止めてほしい。
私には、愛子さまを天皇として継がせたいという思いのあらわれに感じられます。
私自身、愛子さまが即位されることには賛成です。聡明で、国民からの人望も厚い。皇室の顔として申し分ないと思います。ただし、話がもう一歩先に進むと景色が変わります。
愛子さまが一般の男性と結婚され、そのお子様が皇位を継ぐ。ここまで来ると、これは女性天皇とはまったく別の問題になるのです。
女性天皇と女系天皇は、まるで違う
混同されがちですが、この二つは意味が別物です。女性天皇とは、文字どおり天皇が女性であること。
歴史上、女性の天皇は八人十代いました。全員が父方に天皇の血を引く、いわゆる男系の女性です。
愛子さまが即位された場合も、父君は今上陛下ですから、女性天皇であると同時に男系。ここに歴史との断絶はありません。
日本の歴史をどれだけたどっても、女系の天皇は一人も存在しません。愛子さまのお子様が即位されるとしたら、その方がまさに史上初の女系天皇になります。
権力者が皇室を乗っ取れなかった理由
なぜ男系にこだわるのか。その意味は日本の歴史をふり返るとよく見えてきます。かつて藤原氏をはじめとする有力者は、自分の娘を天皇の妻に入れ、生まれた子を次の天皇に据えることで政治の実権を握りました。
母方の親族という立場から権勢をふるうこの手法を、外戚と呼びます。
摂関政治の全盛期、藤原道長がまさにこれでした。
しかし、彼らがどれほど巨大な権力を手にしても、皇位そのものを奪い、自分の家系を新しい皇室に置きかえることはできませんでした。
なぜか。天皇になる資格が「父をたどれば歴代天皇に行き着く男系」に厳しく限られていたからです。
天皇の母が藤原氏の出であっても、父は必ず皇室の血を引く男性でした。
だから、家系そのものが別の一族に乗っ取られる事態は起きなかった。男系継承は、権力者の野心に対する防波堤として働いてきたわけです。
女系を認めると、王朝が入れ替わる
もし女系天皇、つまり母方だけが皇室の血を引く天皇を認めたら、この構図は根本から変わります。皇族ではない男性が皇室の女性と結婚し、その間に生まれた子が天皇になる。
すると、その新しい天皇の父方の血筋は、これまでの皇室とはまるで無関係な家系のものになります。
伝統を重んじる立場から見れば、これは実質的な王朝の交替にほかならない。
二千年近く一本の系統でつないできた皇室の正統性が、そこで途切れてしまうのではないか。女系への慎重論の核心は、この一点にあります。
極端な想像をしてみます。
いつか日本の力が細り、ある大国の強い影響下に置かれたとする。
時の女性天皇が、その国の有力者と結ばれることになったとしたら。二人の子が次の天皇として立つとき、その父方の血筋は日本の皇統とはまるで無縁のものになります。
ここで見落としてはならないのは、相手が外国人だから問題なのではない、という点です。
仮に相手が日本の一般男性であっても、生まれた子は同じく女系の天皇になる。
父方が皇統の外へ出た瞬間に、系統は入れ替わってしまう。
だから男系継承を重んじる人々は、誰と結ばれるかではなく、父をたどって歴代の天皇に行き着くかどうか、その一点を守り続けてきたのです。
もちろん、時代に合わせて女系を認めるべきだという意見も根強くあり、そこはこれからの国民的な議論に委ねられています。
愛子さまの即位には賛成、けれど女系まで進むとなれば別問題。
今回の改正は、その一番デリケートな核心にあえて踏み込みませんでした。
だからこそ、陛下の言葉が重く響きます。
国民が納得できる形で、時間をかけて答えを探していく。急がず、しかし避けずに向き合うべき宿題が、私たちの手元に残されました。
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