知人から聞いた話に、しばらく心を掴まれたままでいます。
ある化粧品会社の入社式では、新入社員たちに一つの課題が出されるそうです。その課題というのが、ちょっと変わっています。「お母さんの手を洗う」というものです。
入社式が終わったら家に帰り、お母さんの手を自分の手で丁寧に洗ってきてほしい。それだけの宿題です。商品知識でも営業のロールプレイでもなく、母の手を洗う。最初に聞いたときは、なぜそんな課題を、と少し不思議な気持ちになりました。
荒れた手に触れて、はじめてわかること
実際に課題をやってきた新入社員たちは、一様に同じ感想を口にするといいます。「こんなに母の手が荒れているとは思わなかった」と。
家事、水仕事、子どもを抱き上げる仕事、誰かのために動き続けた手。自分が大きくなる過程で、母の手は少しずつ荒れていきました。けれどふだん一緒に暮らしていても、わざわざその手をじっと見つめることは、案外ありません。実際に自分の手で包み、お湯で洗い、指の一本一本をたどってみる。そのときはじめて、皮膚の固さや、節の太さや、薄くなった甲の感触が伝わってきます。
自分を育てるために、どれほど働いてくれたか。言葉で説明されるよりも、その荒れた手の感触のほうが、はるかに雄弁です。何も言わなくても、感謝の気持ちが胸の奥からせり上がってくる。そういう経験を、多くの新入社員がするのだそうです。
社長が伝える、たった一つのこと
翌日、出社した新入社員たちに、社長はこう告げるといいます。
「売り上げのことは考えなくていい。今日からお客様の手を、お母さんの手だと思って接してほしい」
新人研修で、売上を考えなくていいと言い切る経営者は、そう多くないでしょう。けれど、この会社が伝えたいことは、はっきりしています。商品を売る前に、目の前の相手をどう見るか。その視点をまず整えてほしい、という願いです。
「お客様の手=母の手」と思えたら、商売はどう変わるか
お客様の手を、お母さんの手だと思ってみてください。
強引に契約させてやろう、という気持ちは湧きにくくなります。今月のノルマのために騙してでも売り抜けよう、とは思えなくなります。化粧水を肌につけるとき、サンプルを手の甲に乗せるとき、自然に手つきも丁寧になります。値段の高い商品をすすめるときも、「この人にとって本当に必要か」を一度考えるようになります。
結果として、接客は柔らかくなり、お客様も安心して相談できる相手だと感じます。売り上げは、その関係から後追いでついてくる。順番が逆になっている店ほど、長く続かないものです。
詐欺まがいの商売と、安心して買える店の違い
世の中には残念ながら、不安をあおって高額な商品を売りつける商売もあります。霊感商法めいた誘い、過度に効果を強調するセールス、断りにくい雰囲気で契約を迫る勧誘。買った側はあとから「なぜあのとき断れなかったのか」と苦しみ、売った側もどこかで魂をすり減らしていきます。
反対に、目の前の相手を「自分の母」と重ねられる店なら、安心して財布を開くことができます。お金が動く場であると同時に、信頼が積み重なっていく場でもあります。買う側にも売る側にも、後味の良いものが残ります。
霊的に見たときの「親への感謝」と仕事
霊的な視点から言うと、親への感謝は、自分の足元の地面を硬く固める作業に近いものがあります。地面がぐらつく人は、どれだけ高いビルを建てようとしても、いつかどこかで傾いてしまいます。
母の手を洗うという行為は、その地面を踏み直す作業です。誰のおかげで今ここに立っていられるのか、肌の感触で思い出す時間です。そこを通り抜けたあとに「お客様の手を、母の手と思って接する」という言葉を聞くと、それは商売の技術論ではなく、自分という存在を整えていく道筋なのだとわかってきます。
仕事は、誰かの一日を少しだけ良くするための時間です。その向こう側にいるのは、別の家族にとっての母であり、父であり、子どもです。手を洗うという小さな課題は、そのことを思い出すための、ささやかな入り口なのでしょう。
今日からできること
1.今日帰ったら、母の手を一度よく見てみる。離れて暮らしているなら、次に会ったときの「やること」として覚えておく。
2.電話で話す機会があれば、最近の手の調子や、肩の具合を聞いてみる。
3.仕事や接客の場面で、目の前の相手を「誰かの家族」として一瞬イメージし直してみる。
4.売上の数字を追う前に、その人にとって本当に必要か、と心の中で一度自問する。
5.騙すような売り方や、不安をあおる売り方からは、たとえ短期的に得をしそうでも距離を置く。
応援いただいたあなたに、幸せが届きますように祈ります
このブログでお伝えしているのは、魂の旅路への入口となる話です。
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ブログには書けない霊的な実践も、ここでお話ししています。
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