ふとした瞬間に、将来のことが急に重たく感じられることがあります。自分の老後はどうなるのだろう、子どものこれからは大丈夫だろうか、病気になったら、年金は、仕事は、人間関係は。そんな心配が次から次へと押し寄せてきて、気づけば心がすっかり沈んでいる。こういう経験は、多くの人が持っているのではないでしょうか。
そして、そんなふうに悲観的になってしまう自分を責めてしまう人も少なくありません。もっと前向きに考えなければ、自分は心が弱いのだ、考え方が悪いのだと。けれど私は、悲観的になりやすいことを心の問題とだけ捉えるのは、少し違うのではないかと思っています。今日はそのことをお話ししたいと思います。
悲観は、気持ちの問題だけではない
私たちは悲観的な気分になると、その原因を二つのどちらかに探そうとします。一つは、実際に状況が悪いのだという客観的な事実。もう一つは、自分の気の持ちようや性格といった気持ちの問題。たいていの場合、この二つのどちらかに理由を見つけて納得しようとします。
けれど、実はもう一つ、見落とされがちな原因があります。それが肉体面の不調です。体力が衰えてくると、人はどうしても悲観的になりがちで、明るく物事を考えることがむずかしくなってきます。同じ出来事でも、体が元気なときは「なんとかなるだろう」と思えたことが、体が疲れているときには「もうだめだ」と感じられてしまう。心の中身は変わっていないのに、体の状態が見方を曇らせてしまうのです。
たとえば、ぐっすり眠れた朝と、寝不足の朝を思い出してみてください。同じ仕事、同じ家族、同じ問題を前にしても、感じ方がまるで違うはずです。これは気合いが足りないからではありません。体が、心の窓ガラスのような働きをしているからです。
体が疲れているサインを、心が代わりに出している
心と体は、私たちが思っている以上に深くつながっています。体力が落ちてくると、ほんの少しのストレスでも大きく揺さぶられるようになります。以前なら気にも留めなかった一言が胸に刺さったり、小さな心配事が頭から離れなくなったり。そういうとき、心が弱くなったのではなく、体が疲れているために、ストレスを受け止める余力が減っているのだと考えてみてほしいのです。
お年寄りが悲観的になりやすいと言われるのも、この体力の衰えが関係しています。年齢を重ねること自体が悪いのではなく、足腰の力が落ち、疲れやすくなることで、心の方にもその影響が及んでくる。逆に言えば、体の調子を整えることで、心の重さがいくらか軽くなる余地があるということです。
現代はデスクワークが中心の生活になり、若い人でも体力が衰えやすくなっています。一日のほとんどを座って過ごし、ほとんど歩かない。そうした暮らしが続くと、知らないうちにストレスへの耐性が落ちていきます。最近どうも気持ちが沈みがちだという人は、心の問題として悩む前に、自分の体がどれくらい動いているかを振り返ってみるといいでしょう。
体を動かすことが、心を支える
ですから、将来が不安だったり、何かと悲観的に物事を考えてしまう傾向がある人は、まず体調を整えて、体力をつけることを心がけてみてください。これは遠回りに見えて、実はとても確かな方法です。
むずかしい運動である必要はありません。散歩をする、庭の手入れをする、そうしたことで足腰を鍛えていくだけで、ストレスへの耐性が少しずつ高まってきます。土に触れたり、外の空気を吸ったり、体を使って何かを動かしたりしているとき、私たちの心は不思議と落ち着きを取り戻していきます。考え込んで出口の見えなかった不安が、歩いているうちにいつのまにか小さくなっていた。そんな経験をした人もいるでしょう。
悲観しやすい自分を、どうか責めないでください。あなたの心が弱いのではなく、体が疲れているだけなのかもしれません。そうであれば、心と向き合う前に、まず体をいたわってあげればいい。体が元気を取り戻したとき、同じ将来が、不思議と違って見えてくることがあります。
今日からできること
一つ、気分が沈んだら、まず体の状態を確認する。悲観的になっているとき、よく眠れているか、疲れがたまっていないかを先に振り返ってみてください。心の問題と決めつける前のひと呼吸です。
二つ、毎日二十分、外を歩く。近所を一周するだけでかまいません。足腰を使い、外の空気を吸う時間が、ストレスを受け止める土台をつくってくれます。
三つ、庭仕事や植物の世話を生活に取り入れる。土に触れ、体を動かしながら何かを育てる作業は、考えすぎた頭をほどいてくれます。ベランダの鉢植えからでも始められます。
四つ、座りっぱなしの時間を区切る。デスクワークが続く日は、一時間に一度立ち上がって体を伸ばす。小さな動きの積み重ねが、体力の衰えを防ぎます。
五つ、不安が大きい日ほど、体を先にいたわる。考えても答えの出ないことを抱えた日は、まず温かいお風呂に入り、早めに休む。体が回復すれば、心も少し軽くなります。
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