対人恐怖症・あがり症の精神療法|森田療法とあるがまま

2021年6月5日土曜日

健康 悩み


クラスの発表会や冠婚葬祭のスピーチ、会社の朝礼など、人前で話さなければならない場面を苦手とする方は多いものです。

多くの人の前に立ち、注目を集める場面では、人はどうしても緊張してしまいます。

手に汗をかき、動悸がして息苦しくなり、顔が真っ赤になったり、めまいや吐き気まで起きてくることもあるでしょう。

そうした症状に怯えて「自分は異常ではないか」と思い込み、無理に抑え込もうとすると、かえって症状が悪化していくことがあります。

私は今日、その苦しみの仕組みを解き明かした森田療法という日本生まれの精神療法を、霊的な視点も交えてあなたにお伝えしたいと思います。

先に申し上げておくと、あなたの繊細さは欠陥ではなく、磨けば光る魂の資質です。

なぜ抑え込むほど緊張は強くなるのか

まず、心の働きが持つ不思議な性質を、身近な例で見てみましょう。

普通のお皿なら、お盆に載せて難なく運べます。

ところが「この皿は高価な品だから、絶対に落とさないように」と厳しく言われると、かえって緊張して落としてしまうことがあるのです。

落とすまいと注意を集中すればするほど、意識は落ちることにフォーカスしてしまい、普段できていたことができなくなります。

綱渡りでも同じ現象が見られます。

足の幅ほどの板を低い場所に置けば、誰でも普通の足どりで渡れるでしょう。

それが、落ちれば大けがをするような高さに同じ幅の板を置いたとたん、足が震えて渡れなくなってしまいます。

「絶対に落ちてはいけない」と落ちることに意識が集中するため、先ほどまでできていたことが逆にできなくなるわけです。

対人恐怖症やあがり症、赤面恐怖症も、これと同じ構造を持っています。

人前に出ると緊張が高まり、普段どおりに喋れなくなったり、大汗や動悸がしてきたりします。

緊張で顔が赤くなることや動悸は誰にでもある反応ですが、それを何とか抑えようとするほど意識がそこへ向かい、かえって症状を強めてしまうのです。

強迫症、社交不安症、パニック症、広場恐怖症、全般不安症、病気不安症、身体症状症など、かつて神経症と呼ばれていた症状の方に、こうした傾向が共通して見られます。

森田療法が見抜いた「とらわれの機制」とは

この仕組みを見抜いたのが、日本人の森田正馬さんという方です。

その考えは現在、森田療法として多くの場所で取り入れられています。

森田さんは、こうした症状を抱える人に共通する性質を見出しました。

内向的、自己内省的、小心、過敏、心配性、完全主義、理想主義、負けず嫌いといった特徴です。

お気づきでしょうか、これらはどれも、感受性が豊かで向上心の強い人の姿でもあります。

その性質と「とらわれの機制」と呼ばれる心理的メカニズムが組み合わさることで、症状が進展していくと森田さんは指摘しています。

第一の機制、精神交互作用という悪循環

とらわれの機制のひとつ目は「精神交互作用」です。

緊張して動悸がしたり汗をかいたりしたとき、神経質な人はそれを深刻に受け止め、意識を集中させてしまいます。

すると感覚はますます過敏になって症状に注意が向き、悪循環の中で症状が強まっていくのです。

これは、マイクをスピーカーに近づけるとハウリングが起きる現象とよく似ています。

音そのものが悪いのではなく、増幅の回路がつながってしまうことに問題があるのです。

第二の機制、思想の矛盾という思い込み

ふたつ目は「思想の矛盾」と呼ばれるものです。

神経質な方は、自分の感情や身体感覚を「こうあるべきだ」という自分の考えに従わせなければならないと思い込みます。

人前でスピーチをする際に「恥ずかしく思ってはならない、もっと堂々としていなくてはならない」と自分に言い聞かせるわけです。

しかし人間の感情や感覚は、そうやすやすと思いどおりには動きません。

思考でコントロールできないものまで従わせようとする矛盾の中に、症状を悪化させる原因が潜んでいます。

意志の力で天気を変えられないように、心に湧く波もまた、命令では止められない自然の現象だからです。

「あるがまま」が教えてくれる魂の姿勢

では、どうすればよいのでしょうか。

森田さんは、患者さんが症状へのとらわれから脱して「あるがまま」の心の姿勢でいられるように促しました。

あるがままとは、不安や症状を拒否したり排除しようとする「はからい」の心を捨てて、そのままにしておく態度を養うことです。

人前で話せば緊張しますし、怖いと感じるのは当たり前のことでしょう。

あがってしまうことも、赤面することも、汗や動悸も、誰にでも起こります。

その反応を受け入れず拒否するところに、症状が悪化していく分かれ道があるのでした。

こうして自分を受け入れ、自分らしい生き方を実現することを、森田療法は唱えています。

私はここに、霊的な真理との深い響き合いを感じます。

霊的な観点から見れば、あなたは肉体そのものではなく、肉体という乗り物に乗って地上を旅している魂です。

動悸や赤面は、乗り物が環境に反応して立てる音のようなもので、操縦席に座るあなた自身の価値とは何の関係もありません。

波ひとつ立たない海が存在しないように、感情の波が立つこと自体は、生きている証であって失敗ではないのです。

そして繊細で内省的な性質は、見方を変えれば、魂が長い旅の中で磨いてきた感受性の表れでもあります。

この世が魂の学び舎であるなら、症状という試練もまた、自分をあるがままに受け入れることを学ぶための教材なのかもしれません。

森田療法の言う「あるがまま」と、霊的な世界で言う「自分という存在への信頼」は、同じ場所を指しているように私には思えます。

今日からできる具体的なアクション

参考までに、今日から試せる小さな実践を挙げておきます。

第一に、緊張を感じたら消そうとせず、「いま緊張しているな」と心の中で実況してみてください。

戦う相手ではなく観察する対象に変わると、増幅の回路が少しゆるみます。

第二に、症状を消してから動くのではなく、症状を抱えたままできることをやってみることです。

声が震えていても挨拶はできますし、手に汗をかいたままでも資料は配れるでしょう。

気分はそのままに、目の前の行動を積み重ねていく姿勢を、森田療法は大切にしています。

第三に、夜眠る前に「今日も緊張しながらよくやった」と、自分の魂にねぎらいの言葉をかけてあげてください。

なお、症状が日常生活に大きく影響している場合は、ひとりで抱え込まず、精神科や心療内科の専門医に相談することをおすすめします。

ここでお伝えしたのはあくまでひとつの考え方の紹介であり、専門家の力を借りることは弱さではなく賢明な選択です。

緊張するあなたも、赤面するあなたも、魂として何ひとつ欠けてなどいません。

むしろその繊細さは、人の痛みを察し、世界を深く味わうために魂が携えてきた、大切な贈り物です。

不安の波を消すのではなく、波とともに泳ぐことを覚えたとき、あなたの人生は静かに、しかし確かに動き始めるでしょう。

ひとつの参考になれば幸いです。

あるがままに生きる道は一日で開けるものではありませんから、心が揺れる日には生きづらさ完全ガイドも、あなたの歩みに寄り添う地図として開いてみてください。

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