高市内閣の支持率はなぜ下がった?物価高と、報われない毎日

2026年7月27日月曜日

時事問題 政策 政治


7月の世論調査で、高市内閣の支持率が各社そろって下がりました。
読売は57%で前回から12ポイント減。日経は58%で10ポイント減。毎日にいたっては41%まで落ち、発足以来はじめて不支持が支持を上回りました。

けれど、私が数字を追っていて手が止まったのは、全体の下げ幅ではなかったのです。

時事通信の調査で、60代の支持が63.7%から39.9%へ、わずかひと月で23.8ポイント落ちていました。

いちばん政権を支えてきた世代が、いちばん急に離れた。

この一点に、いまの日本が抱えている歪みが凝縮されていると私は見ています。

支持率は「下がった」というより「戻った」

まず、冷静に見ておきたいことをひとつ。

発足直後の数字は、そもそも異常でした。産経・FNNが75.4%、日経が74%、読売が71%。

戦後の歴代政権で、ここまでの支持が集まることはめったにない。期待が一気に集中した結果でした。

そこから7月の読売57%、日経58%、共同53.7%、NHK58%、時事49.0%へと落ち着いてきた。

50%台という数字だけを取り出せば、歴代政権と比べてまだ高い水準です。

だから「高すぎたものが通常に戻った」という面は確かにある。そこは公平に見ておきたいところ。

私は政権発足の直後に、支持急増の裏で動いていた「清算」と「回帰」のエネルギーについて書きました。あのとき集まった熱が、いま冷めているだけとも言えます。

問題は、どこから戻ったかではありません。なぜ戻ったのか。

下がり方のほうに、理由がはっきり刻まれています。

暮らしから遠いところで、政治の体力が使われた

7月24日、副首都法が参議院を通過しました。賛成123、反対121。わずか2票差の成立です。

共同通信の調査では「議論が不十分」と答えた人が66%にのぼりました。別の調査では賛成が5割を超えた一方で、「わからない」が3割近くを占めています。

つまり、強く反対されたわけではないのです。関心を持たれなかった。

この法律の霊的な背景については、坂本龍馬が霊示で嘆いた明治維新の逆という記事に書いたとおりです。

人というのは、自分の暮らしが毎月削られている最中に、暮らしから遠い議論へ政治の体力が注がれていく姿を見ると、黙って離れていきます。

政策の中身より、優先順位。信頼が崩れるのは、たいていそこからでした。

手取りを削っているのは、税よりも社会保険料

では、その暮らしの側で何が起きているのか。

財務省が発表した2026年度の国民負担率は45.7%。所得のおよそ半分が、税と社会保険料で消えていく計算になります。

内訳を時系列で並べると、正体がはっきりします。

1970年度、社会保障負担率はわずか5.4%でした。それが2026年度には17.6%。3.3倍です。

同じ期間、租税負担率は18.9%から28.0%へ。こちらは1.5倍にとどまっています。

第一生命経済研究所が家計調査を長期でならした試算も、同じ絵を描いていました。

勤労者世帯の勤め先収入は、2000年の633万円から2025年の713万円へ。25年かけて1.1倍にしか伸びていない。

一方、社会保険料の負担は58万円から83万円へと1.4倍に膨らみました。

収入に対する負担率は19.0%から24.7%へ上がり、その最大の押し上げ要因が社会保険料だったのです。

そして2026年4月からは、子ども・子育て支援金として新たに0.23%が上乗せされます。介護保険料率も1.59%から1.62%へ。

実質賃金は2025年に前年比マイナス1.3%。これで4年連続のマイナスです。

産経・FNNの調査で「手取りが増えた実感がある」と答えられた人は、21.0%にすぎませんでした。

減税は選挙のたびに大きく論じられます。ところが保険料は、国会の議決を経ないまま料率だけが動いていく。

声を上げにくいところから、いちばん取られている。これが現役世代の疲れの正体です。

なぜ減税の議論だけでは何も解決しないのかは、「減税」という甘い罠と社会保障というタブーに詳しく書きました。

給付は「所得」を見て、「資産」を見ていない

苦しい人を助ける。ここに異論を持つ人はいないでしょう。

ただ、いまの助け方には大きな穴が開いています。

物価高対策の給付は、その多くが住民税非課税世帯を対象に組まれてきました。

住民税非課税世帯は全世帯のおよそ24%。そのうち世帯主が65歳以上の世帯が、約75%を占めています。

そして非課税かどうかを決めるのは、前年の「所得」だけ。預貯金がいくらあろうと、不動産をいくつ持っていようと、判定には一切入りません。

結果として何が起きるか。

資産を十分に持っていても、働いておらず年金収入だけなら給付が届く。

資産はなくても、働いて所得を得ている世帯は対象から外れ、その給付の財源を負担する側へ回る。

働くほど損をする。この設計が、真面目に働いてきた人の心をいちばん深いところで削っていきます。

資産を持つ世代を、資産のない世代が支えている

数字を並べます。総務省の家計調査、2025年平均の結果です。

世帯主が40歳未満の世帯は、貯蓄994万円に対して負債1,882万円。差し引きでマイナス888万円。

40代も、貯蓄1,381万円に対して負債1,483万円で、なおマイナス102万円。

ところが60代は、貯蓄2,843万円に対して負債は234万円。差し引きでプラス2,609万円になります。

70歳以上もプラス2,390万円。

65歳以上の世帯の貯蓄は、中央値で1,777万円。2,500万円以上を持つ世帯が36.3%を占めています。

内閣府の年次経済財政報告によれば、55歳以上が家計金融資産の7割超を保有し、70歳以上だけで4割近くを握っている。

その一方、社会保障給付費は年間135.5兆円。うち高齢者関係が86.1兆円で、63.5%を占めます。

支え手の側はどうでしょう。1950年には65歳以上ひとりを12.1人で支えていました。2025年は2.0人。2070年には1.3人になると推計されています。

純資産がマイナスの世代が、純資産2,600万円の世代を、ふたりがかりで支えている。

私は高齢者を責めたいのではありません。いまの高齢者の方々は、それぞれの時代を必死に働き抜いてこられた方々です。

歪んでいるのは人ではなく、設計のほうでした。

19世紀フランスの思想家トクヴィルは、民主社会がやがて行き着く先を「穏やかな専制」と呼びました。

国家がすべての面倒を見る保護者となり、人々は臆病で勤勉な家畜の群れとなって、その羊飼いが政府になる。『アメリカのデモクラシー』にそう書き残しています。

配る手が優しければ優しいほど、支える側の背骨は曲がっていく。二百年近く前の警告が、いま日本で形をとりはじめました。

いちばん失われるのは、お金ではなく気力

先日、40代の相談者の方から、こんな言葉を聞きました。

「昇給したんです。でも手取りは去年とほとんど変わらなくて。頑張る意味が、わからなくなってきました」

責任のある立場を任され、家族を支え、休日も勉強を続けてこられた方です。

制度の話をしているあいだは出てこなかった言葉が、ため息と一緒にこぼれ落ちました。

霊的な仕事を長く続けてきて、確信していることがひとつ。

人がいちばん深く傷つくのは、貧しさそのものではないのです。

努力と結果のあいだにあるはずの線が切れたとき、人は最も早く力を失います。

働く気力が萎えれば、生産も投資も細り、税収も保険料収入も減っていく。

そして減った分を埋めるために、また現役世代の負担が引き上げられる。

この循環を放置したままなら、国の力は確実に落ちていくでしょう。

制度をどう変えるか、その先にあるもの

では何を変えればいいのか。

給付の判定に資産を入れる。年齢ではなく、実際に困っている状態で線を引く。医療と年金の設計そのものに手を入れる。

このあたりは社会保障を半減すれば消費税はゼロにできるという記事に、数字を出して書きました。

ここでは繰り返しません。

私がこの記事でいちばん渡したいのは、制度の設計図より手前にある話だからです。

今日からできること

制度は明日変わりません。それでも、今日からできることが確かにあるのです。

1.給与明細の控除欄を、一度だけ本気で見る。健康保険、厚生年金、介護保険。何にいくら引かれているかを知らないままでは、怒りようがありません。

2.世代で対立しない。相手は隣の高齢者ではなく、資産を見ずに所得だけで線を引く仕組みのほうです。

3.選挙で「保険料をどうするのか」を聞く。減税を語る候補は多い。保険料に踏み込む候補は少ない。そこが見分けの一点になります。

4.自分の資産と時間を、自分の設計で守る。制度が守ってくれるという前提を、いったん外してみてください。

5.湧いてきた怒りを、行動の燃料に変える。恨みは魂を濁らせますが、義憤は人を動かします。

物価高そのものへの心と暮らしの備え方は、物価高と不況を生き抜く方法にまとめてあるので、あわせて読んでみてください。

魂の視点で見たとき、この不公平は誰の問題か

ここで、霊的な視点をひとつ差し出させてください。

魂は、一度の人生では終わりません。

いま高齢である方々の魂は、次には現役として生まれてきます。

いま支える側にいるあなたの魂も、やがて支えられる側へ回り、その次にはまた支える側へ戻る。

そう捉え直したとき、世代間の不公平は「他の誰か」との争いではなくなります。

自分たちが放置した仕組みの中へ、自分がもう一度生まれてくる。

いま歪みを直しておくことは、次に生まれてくる自分自身への贈り物になるのです。

だから私は、この問題を世代の対立として語りたくない。

宮沢賢治は『農民芸術概論綱要』にこう記しました。

「世界がぜんたい幸福にならないうちは個人の幸福はあり得ない」

支える側だけが疲れ果てていく社会は、支えられる側にとっても幸福ではないのです。

自分の子や孫が、働くことに希望を持てない国で生きていく。それを望む高齢者は、ひとりもいないでしょう。

声を上げることは、誰かを引きずり下ろすためではありません。

真面目に働いた人が、その分だけ報われる。当たり前のことを、当たり前に戻すためです。

あなたが日々積み重ねている労働は、統計の数字に表れなくても、確実にこの国を足元から支えています。

その事実だけは、どんな制度も奪えません。

明日もまた朝が来て、あなたは働きに出る。

その一歩に、私は深い敬意を抱いています。

努力が正当に報われる日本へ。

その日はきっと、あなたのように諦めずに立ち続ける人たちの声から、静かに始まっていきます。

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