夏の夜、なぜ私たちは、わざわざ背筋の凍るような話に耳を傾けたくなるのでしょうか。
暑さをしのぐため。昔の人の知恵。そう言われれば、うなずいてしまいます。
けれど私は、少し違う理由があると感じています。
怖い話に惹かれるとき、人の心はほんとうは「目に見えない世界が、確かにある」ということを、思い出そうとしているのではないか。そう思うのです。
このたび、新しいYouTubeチャンネル「怪談の答え合わせ」を開設しました。今日はそのお知らせと、どうしてこのチャンネルを始めたのか、その思いをお伝えしたくて筆をとりました。
「怖い」で終わらせない、という願い
世の中には、すぐれた怪談がたくさんあります。語り手の声、間の取り方、ぞくりとする結末。どれも、聞き手を惹きつける力を持っています。
ただ、聞き終えたあとに、こんな気持ちが残ることはないでしょうか。「怖かった。……で、あれは結局、なんだったのだろう」と。
幽霊とは何か。なぜ、その場所に現れたのか。亡くなった人は、どんな思いを残していったのか。
怪談の奥には、いつも「答え」につながる問いが眠っています。けれど多くの場合、その問いは怖さの余韻とともに、そのまま閉じられてしまいます。
私は、そこにこそ、いちばん大切なものが隠れていると考えています。
怪談は、ただ人を怖がらせるために生まれたのではありません。むしろ、目に見えない世界の理(ことわり)を、物語という形にくるんで、そっと私たちに手渡してくれているのです。
「答え合わせ」とは何か
チャンネルの名前を「怪談の答え合わせ」としました。掲げた言葉は、ただひとつです。
「怖い話には、答えがある。」
このチャンネルでは、まず一つの怪談をじっくりと味わっていただきます。そして、そのあとで。恐怖のその奥にある「霊的な真理」を、私なりに読み解いていきます。
なぜ、その霊は成仏できずにいたのか。その現象は、遺された人に何を伝えようとしていたのか。死とは、そして死のあとに続く世界とは、どういうものなのか。
怪談を入口にしながら、その一つひとつに、私なりの答え合わせをしていく。それがこのチャンネルの試みです。
取り上げる怪談は、私がこれまでブログに書いてきた話だけではありません。
古くから各地で語り継がれてきた怪談も紹介しながら、その一つひとつに、動画のために新しく書き下ろした霊的な読み解きを添えていきます。
よく知られた怖い話の奥にも、まだ語られていない「答え」が隠れているのです。
怖さは、扉にすぎません。その扉の向こうに、「では、この世界はどうなっているのか」という、もっと大きな問いへの答えが広がっています。
ぞっとする物語のあとに、ふっと心が温かくなり、目に見えない世界への見方が変わっている。そんな時間をお届けしたいのです。
日本人は、もともと「答え」を知っていた
思えば日本には、怪談を通して命の理を語り継ぐ、深い文化があります。
明治の日本を愛した文人、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)は、各地の怪談を丹念に集め、『怪談(Kwaidan)』として書き残しました。
彼が惹かれたのは、恐怖そのものではありません。その物語の奥に息づく、日本人の死生観、そして目に見えないものへの敬いのまなざしでした。
お盆に迎え火を焚き、ご先祖を家に招く。そんな私たちの暮らしの中には、「亡くなった人は、いなくなるのではない」という感覚が、今も静かに流れています。
怪談を怖がる心と、ご先祖を大切にする心は、実は地続きなのです。
「怪談の答え合わせ」で私がしたいのは、この、日本人がもともと知っていたはずの感覚を、もう一度そっと思い出していただくことです。
この夏、始めてみてください
チャンネルでは、これから一本ずつ、怪談とその答え合わせをお届けしていきます。夜、一日の終わりに、そっと再生していただけたらうれしく思います。
楽しみ方を、いくつかお伝えしておきます。
・まずは、怪談そのものを味わってください。素直に感じていただいて大丈夫です。
・そのあとの「答え合わせ」を、ご自分の心と照らし合わせてみてください。腑に落ちる部分がきっとあるはずです。
・気になった回は、繰り返し聞いてみてください。二度目には、一度目と違う景色が見えてきます。
・チャンネル登録をして、続きを受け取ってください。怪談は、積み重なるほど、見えてくる世界が深くなります。
怖い話が好きな方も、怖いのは少し苦手だという方も、どうぞ気軽にのぞいてみてください。
このチャンネルが目指しているのは、恐怖で心を消耗させることではなく、恐怖の向こう側にある、静かな安心へとご案内することですから。
暗がりを、ただ怖がるだけの夏から、暗がりの向こうに光を見つける夏へ。
この小さなチャンネルが、あなたのそんな夜の、ささやかな伴走者になれたなら。心から、そう願っています。
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