11月1日、北海道羅臼町の海岸に、電話線のつながっていない電話ボックスが完成しました。
「海の電話」と名付けられたその受話器に語りかけた言葉は、亡くなった人に届くのでしょうか。
2022年4月に知床沖で観光船「KAZU Ⅰ」が沈み、乗っていた26人のうち20人が亡くなって、6人は今も見つかっていません。
その家族や友人が亡き人に語りかけられるようにと、行方不明者の捜索を続けてきた羅臼の漁師、桜井憲二さんと、息子さんと元妻が見つからないままの帯広市の男性が、地元の人たちと半年かけて作ったものです。
犠牲になられた皆様が、光の世界で安らいでおられる事をお祈りいたします。
東日本大震災のあとにも、亡くなった家族から電話やメールが届いたという話が、被災地でいくつも記録されています。
怖い話ではありません。
残された家族を立ち直らせてきた、温かい話です。
相手のいない受話器に人がなぜ話しかけるのか、その言葉が向こうでどう受け取られているのかを、霊的な見方からお伝えします。
線のつながっていない電話に人が集まる理由
海の電話の完成式で、最初にボックスへ入ったのは帯広市の男性でした。
当時7歳だった息子さんに「会いたいな」と語りかけたあと、男性は「2人が見つからないのは、自分を悲しませないようにしてくれているんだよね」と話したそうです。
この一言を読んだとき、胸が詰まりました。
ボックスのそばには船に乗っていた26人と同じ数のガラス玉が置かれ、電車の好きだった息子さんのために木のレールも敷かれています。
同じような電話は、岩手県大槌町にもあります。
ガーデンデザイナーの佐々木格さんが、亡くなったいとこと話したくて自宅の庭に置いた「風の電話」で、震災のあとは家族を亡くした人が全国から訪れるようになりました。
ボックスに置かれたノートには、はじめは早く帰ってきてという言葉が多く、年月がたつにつれて天国から見守っていてという言葉に変わっていったと、佐々木さんは語っています。
つながっていない受話器に話しかけるうちに、悲しみが少しずつ祈りに変わっていく。
電話ボックスは、そのための場所になっているのです。
震災のあとに届いた「ありがとう」のメール
ノンフィクション作家の奥野修司さんは、震災の2年目から毎月のように被災地へ通い、家族を亡くした人たちの不思議な体験を聞き取って、『魂でもいいから、そばにいて』という本にまとめました。
その中には、電話や携帯にまつわる話がいくつも出てきます。
岩手県陸前高田市の女性は、震災から数か月たってようやく、津波で亡くなったお兄さんのご遺体と対面しました。
その翌日、市役所で死亡届を書いていると、携帯に「ありがとう」とひと言だけのメールが届きます。
送り主は、壊れて使えなくなっていたはずのお兄さんの携帯でした。
女性はこれを、お兄さんなりのお別れのあいさつだと受け止めています。
ほかにも、亡くなったお兄さんの携帯に電話をかけたら本人が出た、大きな余震のときに海水をかぶった夫の携帯が急に光り、それから夫が手のぬくもりまで分かるほどはっきりと夢に出てくるようになった、といった話が伝えられています。
石巻市では、3歳の息子さんを亡くしたお母さんが仏壇に声をかけたとき、息子さんの好きだった電動のおもちゃの車が動き出したそうです。
奥野さんは、こうした体験をきっかけに、大きな悲しみを抱えた遺族が自分の力で立ち直っていったと書いています。
震災の直後は、口にすれば頭がおかしくなったと思われるのではないかと、多くの人がこうした体験を胸にしまっていました。
本が出てから、自分たちの体験を話しやすくなったという声が被災地から寄せられたそうです。
霊的に見ると電話の向こうで起きている事
亡くなった人の魂は、死んですぐに遠くへ行ってしまうわけではありません。
通常、数日から一、二か月ほどは、この世のすぐそばにとどまって、家族の様子を見守っています。
自分の体が見つかるのを待ち、家族と対面し、死亡届が出されるのを見届けて、ありがとうと伝えてから光の世界へ旅立った。
陸前高田のメールは、霊的に見ると、そういう魂の歩みの最後の一歩に見えます。
あの世の魂どうしは、言葉ではなく思いで通じ合っています。
地上の家族に何かを伝えたくても声は届かないので、夢に出たり、物を動かしたり、身近な機械に働きかけたりして合図を送ってくるのです。
携帯や電話は、生きていたころに毎日家族とつながっていた道具ですから、魂にとっても思いを乗せやすいものです。
光の世界へ帰っても魂は、地上に残した家族を忘れてはいません。
ですから、こうした合図をこわがる必要はまったくありません。
愛する家族に届く合図は、驚かせるためではなく、安心させるために送られてくるものだからです。
海の電話で語りかけた言葉は届く
こちらから語りかけた言葉は、向こうに届くのでしょうか。
届きます。
霊界では思いがそのまま伝わりますから、電話線がつながっていなくても、声に出さなくても、亡き人を思って向けた言葉は相手のもとへ伝わっています。
葬儀に出られなかった人の思いも、遠く離れた場所からの祈りも同じです。
電話ボックスや写真、位牌は、その思いを向けやすくするアンテナのような役目をしています。
海に眠ったまま見つからない人も、魂は体のある場所に縛られてはいません。
ご遺体が見つからなくても、魂は光の世界へ帰っていけますし、家族の呼びかけも届いています。
見つからない家族を思う人の心に、ふと温かい思いが浮かんでくるなら、それは向こうからの返事である事が多いのです。
亡き人に語りかけるときの心がけ
語りかけるときは、ありがとうという言葉から始めてみてください。
感謝の思いは光となって届き、向こうでの魂の歩みを助けます。
伝えられなかった後悔や、ごめんねという言葉も、言ってかまいません。
ただ、自分を責め続ける事だけは、亡くなった人がいちばん心配します。
泣いてもいいのです。
泣いたあとに、こちらは大丈夫だよと伝えてあげると、亡き人は安心して、光の世界での魂の学びに向かえます。
近くに電話ボックスがなくても、写真の前や仏壇の前で、あるいは空や海に向かって話しかければ、同じように届きます。
亡くなった人との縁は、死で切れるものではありません。
こちらが思えば向こうに届き、向こうも電話や夢や小さな出来事を通して合図を送ってくれます。
受話器に語りかける祈りも、ふいに届く不思議な合図も、その縁が今も続いている証です。
知床の海の電話が、悲しみを抱えた人たちにとって、亡き人と心を通わせる場所になっていく事を願っています。
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