熊本の地震から、二日が過ぎました。七月二十八日の午後四時二十七分、熊本県熊本地方でマグニチュード七・一、最大震度七の地震が起きました。
気象庁はこれを「令和八年熊本地震」と名づけています。建物も道路も広い範囲で壊れ、いまも余震が続いています。
亡くなられた方のご冥福を祈ります。そして避難所や車の中で夜を過ごしている方に、いま伝えておきたいことを書きます。この地震のあとから感じ続けている、次に来るものの話です。
揺れと暑さが、同じ場所で重なります
報道でも繰り返し言われていますが、これから被災地を襲うのは暑さです。七月三十日、熊本県には熱中症警戒アラートが出ました。週末には四十度に迫るという予想も出ています。地面が揺れた直後の街に、この気温がそのまま乗ってきます。
断水した家、停電した家では冷房が使えません。壊れた家に入るのが怖くて車の中で眠っている方、体育館の床に寝ている方もいる。どれも体の熱が逃げにくい場所です。日中の車内は、窓を開けていても四十度を超えます。
水分と塩分は、喉が渇く前に取ってください。年配の方は、渇きを感じる力そのものが落ちています。声をかけ合って、時間を決めて飲むほうが確実です。
濡らしたタオルを首すじや脇に当てると、体の芯の熱が抜けやすくなる。夜も気温が下がりません。寝る前と、夜中に起きたときにも一口飲んでください。
屋根にブルーシートを張る作業や家の片付けは、日が高いうちを避けてください。無理をした人が、夕方になって倒れます。二人以上で作業して、片方が相手の顔色を見る。それだけで助かります。
車の中で長く同じ姿勢をとる方は、足を動かし、水を飲んでください。動かない足の血の塊が肺に飛ぶ事故は、十年前の熊本でも起きました。
そしてもう一つ、大きな余震です。一度目より強い揺れが後から来ることは、過去に何度も起きています。
十年前の熊本が、まさにそうでした。四月十四日に震度七の揺れが来て、多くの人がこれで終わったと思った二日後、さらに大きな本震が来ました。
今夜も、靴を枕元に置いて眠ってください。ひび割れた壁の家に戻るのは、明るい時間だけにしてください。
次に来るのは、水と風です
台風十三号ドルフィンが、太平洋の東で猛烈な勢力に育とうとしています。三十日には最大瞬間風速が八十五メートルに達するとみられ、来週には小笠原諸島の近くを通る予想が出ています。
中心気圧は九〇五ヘクトパスカルまで下がるという予想も出ました。五千人を超える犠牲者を出した伊勢湾台風が、上陸したときに九二九です。それよりも低いところまで育とうとしている、ということになります。
この夏、台風による水害と風害がかなり大きな被害を出す。それは強く感じています。
ただ、私が受け取っている感じでは、それは日本での大災害というより、大陸での大災害になります。中国大陸のどこかで大きな川が溢れ、街が水に沈む。人の数としては、そちらのほうが大きくなる予感がしています。
大陸の水害は、日本の報道では小さく扱われがちです。数字だけが後から流れてきて、そこに何万人の暮らしがあったのかは伝わってこない。もしその知らせを聞いたら、遠い国の話として通り過ぎないで、少しのあいだ手を合わせてほしい。
だからといって、日本は安全という意味ではありません。九州南部と沖縄の方は、次に来る台風に注意していてください。十三号そのものだけでなく、そのあとに続いて生まれるものも含めてです。
地震で傷んだ屋根や壁は、いつもなら飛ばない風でも飛びます。土が緩んだ斜面は、いつもなら崩れない雨でも崩れます。地震のあとの台風は、地震の前の台風とは別物だと考えてください。
年内に、津波の知らせを聞く気がしています
もう一つ、年内のうちに津波の被害が起こる気配を感じています。これも日本列島での発生というより、もっと南の海ではないかと思っています。日本から見て南、島々が点在するあたりの海です。
南の海の地震は、遠い海岸にも波を届けます。一九六〇年のチリ地震では、一日以上かけて日本の三陸まで津波が届き、多くの方が亡くなりました。あのとき恐ろしかったのは、日本では誰も揺れを感じていなかったことです。揺れないまま波だけが来る。だから逃げる判断が遅れました。
海の近くに住んでいる方は、遠い国の大きな地震のニュースを見た日は、海に近づかないでいてほしい。波が来るまでに時間があるぶん、情報を確かめる余裕もあります。潮の様子がおかしいと感じたら、理由を探す前に高いところへ上がってください。
熊本は、数年、目の離せない土地になります
熊本の余震は、これからも続きます。数週間で収まる話ではない。私の感じでは、今後数年は、能登と同じように目を離せない地域になります。
能登では、二〇二四年の元日に大きな地震が起き、そのあとも揺れが止まらず、翌年の秋には豪雨が重なりました。
復興の工事をしている最中に、次の災害が来る。あの形が熊本でも起こりうると感じています。
壊れた家を直す前に雨が降り、直したところに風が来る。その繰り返しが人の心を削ります。
熊本は十年前にも、二日のあいだに二度の大きな揺れを受けた土地です。地下のひずみは、一度の地震で全部抜けるわけではない。
住んでいる方には残酷な言い方になりますが、もう終わったと思わないでいてほしい。家具を固定し直す、寝る場所を変える、玄関に靴と懐中電灯を置く。それだけで助かる命があります。
怖がるためではなく、備えるために
ここまで書いたことは、脅すために書いたのではありません。地震のあとに続くものが見えているなら、先に言っておくほうがいいと思ったからです。
当たらなければそれでいい。何も起きなかったときに、備えだけが残ればいい。
怖れは体を固くしますが、備えは体をゆるめてくれます。水と電池、履きやすい靴、家族との連絡の決めごと。それを今日のうちに済ませたら、あとは深く息を吐いて、目の前の一日を大事にしてください。
被災地の方も、遠くで案じている方も、どうか涼しくできて、よく眠れますように。
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